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HAPPY NEWS 2017
ハッピーニュース

(声)勉強する若者に席譲った女性

朝日新聞 2017年4月22日付朝刊を読んで

三上 久代さん (北海道:62歳)

 

笑顔で温かく受け入れ、包み込み、周りを明るく気持ち良くさせる。良い年を重ねた方々に、自分勝手な私はこれまでよく助けられてきた。

社員研修の資料とペンを出し、朝の通勤電車で立ったまま勉強し始めた若者。その若者にどんな事情があったかは分からない。切羽詰まった真剣さ、緊迫感があったのだろうか。「座って勉強して」と席を譲った年配の女性のまなざしは温かい。恐縮した若者にかけた「たまには譲ってみたい」と重ねる言葉。この余裕がたまらない。「寝ちゃわないように気をつけます」とかえす若者の率直さ。こんな出来事で一日が始まったら、なんていい日なのだろう。その場に居合わせて、投稿してくださった方にも感謝だ。

通勤が必要なくなった身にも春のうれしさが伝わり、明るい気持ちになり、思わずこの投書を切り抜いた。

山本昌さんのコメント

私は職業柄、満員電車に一度しか乗ったことがありません。「こんな状況で毎日通勤する人たちは凄い!」と思います。そのような中で、年齢にかかわらず相手の立場を思いやった気持ちや言動には、とても心温まります。例えば、あいさつも年下の人から年上の人にするものではなく、気付いた人がするものだと思っています。年齢・世代を越えた思いやりは、日本人が忘れてはならない「心」ですね。

山本昌(スポーツコメンテーター)

記事本文

教育団体職員 長尾松代(神奈川県 50)

朝の通勤電車でのこと、社会人1年生とおぼしき若者が隣に立った。かばんから社員研修の資料らしき冊子とペンを取り出すと、勉強しはじめる。すると、前に座っていた年配の女性が「どうぞ、座って勉強して」と言いながら立ち上がった。

固辞する若者に、「その方が能率が上がるでしょ」と座るように促す。若者が恐縮していると、女性は「この年齢になると、いつも譲られてばかりで、たまには譲ってみたいのよ」と笑う。若者が礼を言って座り、「寝ちゃわないように気をつけます」とほほ笑むと、まわりから温かい笑みが漏れた。

立った女性を見て、ハッとした。座っていたときよりも若く感じられたのだ。誇らしささえ感じさせるその表情には、力がみなぎっている。若者を応援する気持ちが、女性を明るい顔にさせているのかもしれない。席を「譲って」元気になる、なんとすてきなことだろう。

目の前の車窓に満開の桜並木が広がった。それを背に勉強する若者、そして応援する人たち。春っていいな、と思わず深呼吸した。

承諾番号18-0732
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