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2015.04.12 update.

境連ぬる国にして① 「木曽路 つながり続ける」

信濃毎日新聞社 | 2015年3月3日掲載

隣接する県の数が8と、全国最多の長野県。県歌「信濃の国」でも、旧国名で10の地域と「境連ぬる」とし、信州の特徴として真っ先に挙げられている。木曽郡だった旧山口村が岐阜県中津川市と合併し、今年で10年。県の枠にとらわれず、隣県と力を合わせた活動を進める地域を見てみよう。

[木曽郡6町村・塩尻市+岐阜県中津川市(旧山口村)]
<観光イベントや共通パンフ作り>
木曽路の南の玄関口、旧中山道馬籠宿(岐阜県中津川市)の古い町並みに、温かな約300個のアイスキャンドルの光がともった。いてつく2月上旬の夜、馬籠観光案内所の近くに設けた雪灯籠はひときわ明るい光を放ち、観光客らが足を止めては写真に収めていく。
イベントは、木曽谷の各地で日没後、アイスキャンドルをともす「木曽路氷雪の灯(ひ)祭り」の一環だ。8回目の今年は1月24日~2月14日の週末を中心に、北は塩尻市贄川から、南は中津川市馬籠までの16カ所が順次、会場となった。馬籠宿では、馬籠観光協会が中心となって参加している。
馬籠宿の所在地はかつて、長野県の旧木曽郡山口村だった。馬籠観光協会長の安藤幹夫さん(66)は「県が替わっても、馬籠は木曽の一部。連携して木曽谷を盛り上げたい」と言った。

真冬の木曽谷にアイスキャンドルをともす催しは、もともと木曽郡木曽町福島と塩尻市奈良井などで個別に行っていた。木曽谷全体に広がったのは、2007年のNPO法人「木曽ユネスコ協会」(塩尻市)の呼び掛けがきっかけだった。
「木曽路には11宿があり、古くからの伝統がある。木曽谷の活性化のため、一緒になって物事を進めるのは重要だと思った」と、同協会長の井原正登さん(69)は振り返る。氷雪の灯祭りは現在、木曽谷のまちづくり団体などが連携し、実行委員会形式で開いている。
事務局は木曽観光連盟。木曽郡6町村と塩尻市に加え、岐阜県中津川市も加わって観光パンフレットなどを作り、木曽谷をPRしている。木曽路を訪れる外国人も増え、木曽郡南木曽町の妻籠宿と馬籠宿も人気になっている。
妻籠観光協会と馬籠観光協会は連携し、春から秋の間、峠を歩く人のために両宿場間で荷物を運ぶサービスをしている。重い荷物を背負う外国人バックパッカーには特に好評だという。妻籠の保全などを行う住民組織「妻籠を愛する会」によると、両市町境の馬籠峠を越えて宿場を往来する外国人は本年度、昨年12月末時点で1万1千人を突破。統計がある09年度以降、最多となった。

馬籠にとっても、県境を越え木曽路で連携する重要性は増している。リニア中央新幹線計画では中津川市に中間駅ができ、都市部からのアクセス向上で観光客増加が見込まれるからだ。
想定しているのは、中津川から木曽、松本を巡り、岐阜県の飛騨・高山へ抜けるルートだ。馬籠観光協会長の安藤さんは「最近外国人に人気のルート。連携を密にして観光客を呼び込む必要がある」と話す。そして何よりも「観光客に県境は関係ない」と安藤さん。これからも「木曽」の一部であることを前面に出し、馬籠をアピールしていきたいと考えている。(高野雄司)
[木曽の宿場町]
江戸時代に江戸と京都を結んだ中山道のうち、木曽谷には北から贄川、奈良井、薮原、宮ノ越、福島、上松、須原、野尻、三留野、妻籠、馬籠の11の宿場が設けられた。旧木曽郡山口村にあった馬籠宿は、2005年2月13日に「平成の大合併」で同村が岐阜県中津川市に編入合併し、長野県から外れた。越県合併は04年、同村が投票による村民意向調査をし、合併賛成が多数だったのを受けた。

信濃07

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VOICE!happy news特派員・市田 祐基 24歳 大学院生 長野県

私たちは、国や県、市町村といった行政区分によって物事を考えがちではないだろうか。行政区分は枠組みの1つでしかない。文化や歴史、人の流れに目を向ければ、人や地域が持つたくさんのつながりを見つけることができるはずだ。新たなつながりをつくることと同時に、もともと存在していたつながりを見出すことが大切だ。

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