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2016.03.02 update.

空飛ぶミカン 夫婦の絆

中国新聞社 | 2016年2月14日掲載

【鹿島のケーブル】(呉市)

空飛ぶミカン 夫婦の絆

急勾配の段々畑の斜面を、ブオーンと音を立てながらミカンが空を飛んでいた。広島県最南端の有人島である呉市の鹿島。山の上からミカンを運ぶため、「ケーブル」と呼ばれる簡易索道が今も使われる。

島南部の福王山中腹にある石中正彦さん(76)の段々畑。高さ100メートルほどに立つ小屋から海に向かって360メートルのワイヤが延びる。レバーを引くと、ミカンの木箱が載った荷台が谷を滑り降りていった。終点では妻の須磨子さん(69)が待ち受け、運搬車に積む。今度はエンジンを使って荷台を上に戻し、作業を繰り返す。ワイヤをたたけば終了の合図だ。

背負子(しょいこ)でミカンを運んでいた農家にとって、ケーブルは画期的な道具だった。楽になったが2人いなければ作業はできない。農道整備が進み、1人で動かせる農業用モノレールが開発されて役目を終えた。山頂まで耕作された福王山ではモノレールだとよその畑を通らねばならない。空中なら迷惑を掛けないため、まだ現役というわけだ。

ケーブルを作っていた業者はもうない。油を塗ってワイヤを補強し、壊れた滑車は自分で直す。伸びてワイヤに引っかかる枝も切らなければならない。でも、「ケーブルが動くんは夫婦が元気な印なんよ」と須磨子さんは笑う。

須磨子さんから「島一番の働き者」と言われる正彦さん。「大変だがこれがなきゃ仕事にならん。ええのを作っても自然やイノシシが悪さして大変。でも作るのは楽しいから遊ばん程度にまだまだ頑張るよ」と精を出している。(写真と文・山崎亮)

であい彩々

冬になれば、鹿島の海岸沿いではヒジキが採れる。港などで天日干しをしている風景が見られる。

西崎知治さん(68)は、潮がよく引いた未明、自宅近くの磯に付いたヒジキを刈っていく。平釜で6時間湯がいた後、小分けにしてビニールシートに置き、3日間乾燥させる。

家族で食べるほか、知人にも頼まれるという。「炊いてもいいし、いりこを入れてふりかけにしてもおいしい」と話していた。

【写真説明】ケーブルにつるされた荷台に満載したミカンが一気に谷を滑り降りる

【写真説明】採ったヒジキを広げて天日干しする西崎さん

島彩々

 

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VOICE!happy news特派員・中山小己 20歳 広島大3年 広島県

まるでミカンが空を飛んでいるような写真に思わず笑顔になってしまいました。 古くなったケーブルを何度も修理しながら大切に使っていて、物を長く丁寧に扱うことの大切さが伝わりました。 現代は安く、便利な道具であふれており、壊れたらすぐに買いかえるという習慣ができあがってしまっているように感じます。 そんな中、この記事を見てあらためて自分の生活を見直すことができました。 ケーブルが動いていることは、夫婦が元気な印。いつまでも長くケーブルが動き続けてほしいです。

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