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2016.04.01 update.

80歳 夢かなえ卒業

上毛新聞社 | 2016年2月14日掲載

太田フレックス高(太田市下田島町、天田智晴校長)の通信制に通う80歳の女子生徒が来月卒業を迎える。中村コウさん=栃木県足利市上渋垂町=は本年度の県内卒業予定者の中で最高齢だ。戦後の混乱期には進学がかなわず、仕事や子育てで忙しい日々を過ごしてきたものの、「いつか高校に行きたい」との思いを抱き続けていた。恩師からの言葉や教職員の応援を支えに3年間勉学に励み、60年越しの夢をかなえる。

中村さんは1935(昭和10)年、足利市内の農家の長女として生まれた。小学校低学年までは戦争一色で、まともな勉強はできなかった。中学時代も家業の手伝いが優先され、学校を早退することも珍しくなかった。勉強は好きで高校進学を希望したが、父親に「家庭に入る女に勉強は必要ない」と反対され、実現しなかった。

22歳で結婚した夫の菊蔵さんと共に都内へ移住。菊蔵さんの会社を手伝いつつ近くのゴルフ場でも働き、長女を育てた。

足利に戻った後、菊蔵さんは闘病生活の末、2011年に腎臓がんでこの世を去った。しばらくは落ち込んだが気持ちを整理し、「仕事ばかりだった自分のために時間を使おう」と夢だった高校進学を決意した。中学時代の恩師の「なせば成る」という言葉を励みに、13年に隣県だが通学可能な同校の門をたたいた。

月2回の登校日は電車で通った。「登校日の前日になるとわくわくして眠れなかった」といい、どの生徒よりも早く教室に着いた。勉強では英語で苦戦した。英単語のつづりが分からず、聞いたままの音をひらがなで書き取り、家に帰って辞書で調べた。地道な努力が実り、1年次の後期試験は90点以上の好成績だった。

担任の前田貴之教諭は「勉強に対する姿勢や、人間的な魅力が素晴らしい」と人生の先輩に敬意を表す。学校では孫ほど年齢が離れた生徒から「コウさん」と呼ばれた。常に周りには輪ができ、遅れた“青春”を謳歌(おうか)した。「卒業できるのは先生や生徒のおかげ」と感謝する。

今後の予定について「介護施設でボランティアをしたい。自分が介護を受ける時の勉強になるでしょ」。新たなことに挑戦し、学ぼうとする意欲は衰えていない。

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VOICE!happy news特派員・高橋泰斗 21歳 会社員 群馬県

長い人生の中で最も輝く瞬間である高校の3年間。中学校からエスカレーターで上っていくかのように、多くの人はその期間を当たり前のように過ごしています。今回紹介する記事は、当たり前のように過ごすことが多い時間を、一つの夢ととらえ、60年越しでかなえた女性の話です。 中村コウさんは、現代なら勉学にいそしむべき年齢に差し掛かった頃、戦争や家業の手伝いを優先させられ、まともに勉強ができなかったそうです。高校への進学もかなわず、22歳で結婚。そして、月日は流れ、自分の時間ができたことを契機に高校への進学を決意、この春高校を卒業しました。 ここまで平常心で読み進めてきた私ですが、次の文を読んで感嘆しました。「感嘆」というより「驚嘆」と言うべきでしょうか。今後の予定を聞かれると「介護施設でボランティアをしたい。自分が介護を受ける時の勉強になるでしょ」。この回答に驚いた理由は二つあります。 一つは記事にも書かれている新たな事に挑戦する意欲。もう一つは「自分が介護を受ける時の勉強になる」です。 この一言の持つ意味を考えました。介護ボランティアを体験することで、介護をする人の気持ちを理解する。そしてその経験を元に介護を受ければ、世話をしてくれる人がいかにやりやすいかが分かってきます。結果的に世話をしてくれる人が楽に介護をすることができます。こういった思いやりの心が根底にあるのではないかと思いました。 これほどまでに思いやりの心を持った方はそうはいません。私も中村さんのように常に新たな事に挑戦していく志と、常に人に感謝する姿勢、そして思いやりの心を持つように心掛け、自分の新たな可能性を模索、開拓できるよう精進していきたいと思います。

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