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2016.11.15 update.

高齢者や子供の癒やしに

産経新聞社 | 2016年10月12日掲載

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認知症の高齢者などへの心理的なケアに、花を活用する取り組みが広がっている。花にはイルカや犬などの動物と似た癒やし効果があり、実際に認知症が改善したり、子供の自己肯定感が高まるなどの変化が起こったりするという。(加納裕子)

◆気持ちに寄り添う

「うまくできた、大満足」「今日は1人でできたんですね、すごい」

今月4日、神戸市垂水区の特別養護老人ホームで、月に1度の「マインドケアフラワーセラピー」が行われていた。アロマオイルの手浴と手遊びで緊張をほぐした後、入居者10人がキクやリンドウなどの花をスポンジに差し込んでいく。

このセラピーは、1級フラワー装飾技能士(国家資格)で「KOBEマインドケアフラワー協会」代表のひらのひろみさん(56)が平成17年に開始。主役になる鮮やかな花は自分、小さな花は周囲の人、アクセントになる花や葉は個性の強さを、長く伸びる花は気持ちの伸びやかさととらえる。花のレイアウトはそれぞれの人の個性や感情、ストレスを表しており、セラピストが花を見ながら心理分析することで、うまく言葉にできない気持ちに寄り添う。

この日参加していた女性(84)は「きれいなお花が好きだから、毎回楽しみ」とほほえんだ。ひらのさんは「認知症の方の言葉数が増え、表情が明るくなったり、意欲が生まれたりします。薬に頼らないケアとして活用が広がれば」と話す。

◆一人一人に役割

日本古来の華道が持つ「すべての花に価値と役割を持たせる」という考え方を生かし、ひとり親家庭や不登校、DV、精神疾患などに苦しむ人の社会参加を促す取り組みもある。

京都市右京区のNPO法人「フラワー・サイコロジー協会」では華道と生き方をリンクさせる「花と心の教室」を中心に、さまざまなワークショップでこうした人たちを迎える。同法人理事長で華道家の浜崎英子さん(51)は「花を生けながら人生について考えることで、一人一人を大切にする考え方がより身につきます」と話す。

たとえば短く切りすぎて「失敗した」と思った花でも、「おかげで面白いものが作れる」「これに挑戦してみよう」と違う角度から考えれば素晴らしい花に変わる。こうした経験を人生におきかえ、自分の考えを変えれば未来が変わることを実感できるという。

花と心の教室では、花の感触やにおいなどの五感を大切にし、好きだと思った部分を生かすよう促す。4年前から参加する50代の主婦は「少ないお花でも、それぞれに存在感が生まれて感動する。心が落ち着き、解放される時間です」とうなずいた。

◆他者と共有を

花が人の心理によい作用を及ぼすことの研究も進んでいる。浜崎さんは同志社大学大学院総合政策科学研究科で華道とソーシャル・イノベーション(社会変革)の可能性について調べており、これまでに華道によって認知症の高齢者本人だけでなく介護者のストレスが軽減したり、子供の自己肯定感が向上したりすることを明らかにした。

生きた花に対する安心感や希望、ぬくもり、愛情、受容といったイメージは、イルカや犬、馬などの動物に対して抱くイメージと似ているとの調査結果も。浜崎さんは「花を通して感動したことや驚いたことを家族や友人と共有すれば、より豊かな関係性の構築につながります。道具や高価な花がなくても、洗濯ばさみや石を使って身近な草花を生かすことに、ぜひ挑戦してみて」と話している。

無断転載不可

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VOICE!読者A 31歳 会社員 千葉県

野に咲く花にふれることが「薬に頼らないケア」となって子どもたちの自己肯定感を高め、認知症の方を笑顔にする。五感を研ぎ澄まして多彩な花の感触やにおいなどを受け止めることが、さまざまな個性を持つ一人ひとりを大切にしようという気持ちを育てる。もの言わぬ植物の癒やし効果は、天からの贈り物だ。

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