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2018.01.18 update.

上下-府中「いなでん」の日々

中国新聞社 | 2018年1月7日掲載


上下-府中「いなでん」の日々/福塩線全通80年/友情育む場 SLの思い出も

 JR福塩線が全通して、ことしで丸80年となる。最後に開通したのが府中―上下間(26・7キロ)。今は1両の列車が山あいをのんびり進む。住民は親しみを込めて「いなでん」と呼ぶ。乗客が日常を紡ぐ車内の風景を切り取った。(山崎雄一)

 朝は高校生が会話や読書、勉強など思い思いに時間を過ごす。「みんな知った顔。学校の延長みたい」と府中高3年の泉果歩さん(18)。パンやおにぎりを頰張る姿も。

 高校生の間で、田舎の電車「いなでん」の名前が広がったのは20年くらい前から。和やかな日常の雰囲気は当時から変わらない。

 1970年まではSLが走った。トンネルに入れば車内に煙が充満。「子ども時代、窓の開け閉めが楽しく、乗るのが待ち遠しかった」と府中市上下町の主婦高垣美智子さん(72)。子どもは木材を運ぶ貨物車両に乗り込み、煙まみれのトンネル内で散らかる石炭の破片を投げ合った。車内は格好の遊び場だった。

 車時代に入り利用は減ったが、乗客が少ない車内では顔見知りになりやすい。「試験で早く帰れば『またサボりか』と、車内でおばちゃんに注意されたな」。三次市甲奴町の会社役員大石正芳さん(51)の、府中東高時代の思い出だ。

 「いなでんで仲のいい友人ができた」。広島修道大3年の河村尚子さん(21)は府中高卒業式の朝、同級生と駅で記念撮影。今ではその同級生と交際中だ。「当時は当たり前に乗った。今思えば大切な時間をつくってくれたんだ」。乗客の日常にそっと寄り添う。

 クリック JR福塩線 福山(福山市)と塩町(三次市)をつなぐ78.0キロ。両備軽便鉄道が1914年に両備福山―府中町(現府中、府中市)間に開業したのが始まり。33年に国有化され、38年7月に上下―府中町間が開通して全線開通。福塩線と名付けられた。八田原ダム建設に伴い、89年に八田原駅が廃止されて以降、福山と塩町を含め計27駅がある。府中以北は非電化区間のため以南からの直通列車はなく、府中で乗り換える。

【写真説明】会話が弾む通学中の高校生。朝は和やかな雰囲気が広がる(撮影・河合佑樹)

【写真説明】JR河佐駅近くの鉄橋を通過する1両編成の車両(府中市)

【写真説明】上下高(府中市)付近を煙を上げて走るSL=1970年11月(高垣さん提供)

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VOICE!清水大輝 21歳 大学生 広島県

 まず目に飛び込んでくるのは、山あいを走る1両の列車の車中で楽しそうに談笑する女子高生たちの写真。こんな電車通学に憧れをもっていた私にとって、実は羨ましい風景だったりする。
 車中の過ごし方は、さまざまだ。読書や勉強、貴重な睡眠時間を確保しようとする学生も見受けられる。「学校の延長線みたい」という声もある。ここに切り取られた一コマは、彼らにとっては当たり前の学校での光景。「いなでん」80年という歴史のなかには、そういった青春の1ページをいくつも生み出してきたのだろうか。
 今日の若者の主な電車内での過ごし方は、スマホに傾倒すること。画面とのにらめっこでは、毎日では見飽きるような車窓からの風景でさえ、思い出には残らない。「いなでん」が80年走り続けてきた田舎の景色、そしてその1両のなかで起こったことの一幕は本当に大事にしてほしい。    

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