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113番元素命名案 「日本発」悲願かなう

毎日新聞社 | 2016年6月9日掲載

クローズアップ2016:113番元素命名案 「日本発」悲願かなう

日本チームによる「ニホニウム(Nh)」の命名は、欧米陣が独占してきた新元素の発見や合成に風穴をあける金字塔だ。すぐさま人に役立つ成果ではないが、極めて困難な新元素の合成は国の技術力の集大成と言える。日、米、露、独を中心に各国が威信を懸け、次の新元素を合成すべく激しい国際競争を展開している。【阿部周一、河内敏康】

◇「三度目の正直」へ実験360兆回

新元素113番を合成した理化学研究所(埼玉県和光市)を中心としたチームに命名権が与えられて約50日後の2月19日、同研究所に実験に携わった全国の研究機関から約20人が集まった。どんな名前にするかを考える会議だった。
「自分たちの国で作った元素だとアピールできる名前にしたい」。合成の中心的役割を果たした森田浩介グループディレクター(59)は語り、出席者に名前を提案するよう促した。有力候補とされたのは外国人に分かりやすい「ジャポニウム」。ただ、日本人の蔑称とされる「ジャップ」を連想させるため外された。その他にも数案が出たが、約1時間の話し合いでまとまったのは「ニホニウム」。参加者の一人は「多くの研究者が力を合わせて作り上げた成果。名前も民主的に決めた。歴史的な瞬間に立ち会い興奮した」と語る。
新元素の発見・合成は日本の化学、原子核物理学界にとって長年の悲願だった。古くは、東北帝国大学長を務めた小川正孝博士が英国留学中だった1908年、43番を見つけたと発表し、「ニッポニウム」と命名。一時は周期表に掲載された。だが、実は75番の間違いだったことが後に分かり、幻に。新元素の発見ではあったが、その時既に米国チームが75番を「レニウム」と命名していた。39年ごろには、理研の仁科芳雄博士率いるグループが93番の合成を試みたが成功しなかった。
「三度目の正直」を合言葉に理研チームは2003年9月、まだ見ぬ113番の合成を目指して実験を始めた。重金属のビスマス(83番)に亜鉛(30番)の原子核を高速でぶつけて核融合させようとしたが、衝突エネルギーが強ければ壊れ、弱ければ融合しない。ようやく1個目の合成に成功したのは開始から10カ月後の04年7月。05年4月には2個目に成功した。そして、確かに合成できたという証拠を得ることになる3個目は12年8月だった。それまで9年間で衝突は360兆回にも及んだ。
その間、露米チームが別の手法で113番の量産に成功したと発表。だが、理研チームは新元素が別の元素に崩壊していく過程を示すことで合成を証明し、国際純正・応用化学連合(IUPAC)から命名権が与えられた。研究に参加した問叶(とかない)冬樹・山形大教授(原子核物理)は「自分たちの実験の手法や質には自信があった。だが、露米チームに命名権を奪われるのではないかと気が気でなかった」と振り返る。森田さんは初詣では毎年必ずさい銭箱に113円を投げた。
ニホニウムはわずか約0・002秒で崩壊するため、実生活に役立てることは難しい。しかし、IUPAC元会長の巽(たつみ)和行・名古屋大特任教授は「日本生まれの元素が刻まれた周期表は、化学を学ぶ日本の中高生に大きな刺激を与える。研究に進む若者が増える効果は何ものにも代え難い」と話した。

◇国際競争激しく

「人間は宇宙が何でできているか考えずにはいられない。元素は宇宙誕生時や星の大爆発で盛んに作られてきた。元素を知ることは宇宙を知ることだ」。新元素を作る意義を東京大の桜井博儀(ひろよし)教授(原子核実験)は強調する。
天然に存在しない元素を人工的に作ろうとすると、原子核を加速させて別の原子核に衝突させる装置や、ほしい原子核だけを分離する装置が必要で、高い技術力が求められる。また、陽子の数(原子番号)が増えるほど原子核は重くなり、加速が難しい。桜井教授は「新元素を作る能力は科学レベルを示す。新元素づくりは国の威信をかけた戦いでもある」と指摘する。
歴史上、新元素の探索は欧米がけん引してきた。最初に着手したのは米国だ。加速器で中性子をウランに照射し、93番ネプツニウムと94番プルトニウムを1940年に作るなど、103番ローレンシウムまで独占した。99番アインスタイニウムや100番フェルミウムは、世界初の水爆実験の灰で発見された。その後は他国も参入。93〜118番を発見国別で見ると、米12個▽独6個▽露米共同5個▽露2個▽日1個だ。
次の新元素の合成・発見に向け、各国とも動いている。実験の中心となる加速器は、ロシアが新施設を建設中。ドイツは既存施設の拡張に着手した。新規参入のフランスも既に建設し、新元素の分離装置を整備している。日本も理研が新しい分離装置「GARIS2」を完成させ、来年にも119番や120番の合成を目指す。理研チームの一員である森本幸司・チームリーダー(原子核実験)は「119番以降は原子核が重いため、これまでにない方法が求められる。各国が横一線の状況で、競争が一層激しくなるだろう」と語る。

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VOICE!miwa シンガー・ソングライター

"人間は宇宙が何でできているか考えずにはいられない"という言葉のように、宇宙を考えることは、私たち自身を見つめることに繋がっているのではないかと思います。 目に見えるものと見えないもの、信じるかどうかは人それぞれですが、目に見えないことも科学によって証明されたものもあり、それは人の心に勇気や希望を与えているんじゃないかなと感じています。 新元素がニホニウムと命名され、これからの日本の科学を担っていく方たちだけでなく、きっと多くの人が勇気をもらい、色んな事への可能性を見出だすきっかけとなると思いました。私もその一人です。

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