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2017.02.09 update.
粋で繊細 異国で江戸文字発信 稲敷の職人・鶯春亭梅八さん 3月にハワイ公演
相撲や歌舞伎、寄席で見られる図案文字「江戸文字」を書く職人の鶯春亭(おうしゅんてい)梅八(本名・木村悟)さん(62)=稲敷市=が、ハワイ・オアフ島の大型商業施設で3月に江戸文字の実演を行う。日本文化の発信だけでなく、「江戸文字があるから今の自分がある」と、個人的な感謝の思いを胸に秘め、異国の地で筆を走らせる。(海老原由紀、写真も)
◆巧みな話術で好評
梅八さんは「梅八流」と名付けた独自のスタイルを確立した職人で、パフォーマンスのように人前で話しながら文字を書く。セミプロの落語家としても活躍し、巧みな話術で海外の観光客にも評判が良いという。
そのキャラクターと、文字を書く職人であることに目を留めた男性が昨年末、梅八さんにハワイの大型商業施設で開く催事への参加を誘った。男性は海外で着物など日本の文化を紹介する催事を企画している。
梅八さんが江戸文字を始めたのは18歳のときで、専修大の落語研究会に入ったことがきっかけ。寄席の看板を書いていた橘右近さん=故人=に師事した。
その後、江戸文字とは一時関係が切れる。大学卒業後に千葉県にある実家のスーパーを切り盛りしていたが、36歳のときにアルコール依存症を患って苦しめられ、一時、仕事ができなくなった。治療をしながら新しい職場を見つけるが、酒の臭いが原因で長続きしなかった。
◆どん底から救われた
どん底状態を救ってくれたのが江戸文字だった。妻の典子さん(62)からも「好きなことをやったら良いよ」と、背中を押され、47歳でついに独立。梅八さんにとって、今の自分があるのは、この「伝統芸能」のおかげという気持ちが、何よりも強いという。
江戸文字を「生業」にしてからは酒を一滴も飲まず、アルコール依存症からも立ち直ることができた。梅八さんは「みんなが興味を持ってくれて、声をかけてくれる。酒を飲むどころではない。江戸文字に助けられた」と話す。
3月のハワイでのイベントは、英語を交えた落語も披露する予定だ。2月に現地で打ち合わせし、江戸文字や落語を理解してもらえる工夫や仕掛けを考えるという。
「日本の粋で繊細な伝統芸能を見直し、大切にするきっかけになれば」と梅八さん。江戸文字を海外に発信し、ささやかだが〝恩返し〟となる舞台を楽しみにしている。
【写真】仕事場の引っ越し作業の合間に、筆を走らせる鶯春亭梅八さん=稲敷市江戸崎
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VOICE!いけどう 21歳 学生 東京都
芸は身を助くという言葉もあるが、こうした伝統文化に導かれる人、救われる人達がいる。文化を保全、継承する活動は、文化というものが時に人々に手を差し伸べてくれるものであるからこそ、必要なものなのだろう。