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2016.12.14 update.
小窓=御嶽山噴火で犠牲 娘夫婦のもとへ母旅立つ 御前崎 「健康で供養」かなわず
御前崎市内の年配者を対象にした「シニアスクール」の卒業式が29日、市立白羽小で行われた。スクール生31人の中にこの日を迎えることができなかった一人の女性がいる。同市白羽の増田きみ江さん。肺がんで12日に他界した。67歳だった。2014年9月、御嶽山(長野、岐阜県)噴火で娘夫婦を亡くし「供養のために健康でいないと」と語っていた。願いはかなわず、わずか2年後に娘夫婦のもとへ旅立った。
卒業式が行われた教室の机には、笑顔でポーズを取る増田さんの写真と黄色い花が飾られた。式後、増田久美子校長らが自宅を訪問。祭壇に静かに手を合わせ「きみ江さん、卒業証書お持ちしましたよ」と語り掛けた。増田さんの夫暁弘さん(69)は「娘たちの供養ができなくなり、本人が一番悔しいと思う」と言葉を詰まらせた。
今年9月27日に御嶽山麓で行われた追悼式に出席した際は、せきが出る程度だったという。10月に入り体に痛みが現れ、詳しい検査で深刻な事態が判明した。手術を受けたが、帰らぬ人となった。「こちらは元気だから心配しないで」「雪が溶けたころにまた来るね」。増田さんは御嶽山を訪れるたびに娘夫婦にそう語り掛けていた。
旧御前崎町の職員時代は、町営の有線放送に30年以上携わり、町の出来事や魅力を発信した。近年はシニアスクールの設立と運営に尽力した。両事業を増田さんとともに進め た同市白羽の曽根竹男さん(77)は「地域愛が人一倍強く、周囲の信頼も厚かった。市の財産のような人を失った」と早過ぎる死を悼んだ。
(御前崎支局・武田愛一郎)
【写説】増田きみ江さんの写真が飾られたシニアスクールの卒業式=29日午前、御前崎市の白羽小
静岡新聞社編集局調査部許諾済み
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2014年の御嶽山噴火から2年以上が経過し過去の遠い出来事のように感じられるが、増田きみ江さんら遺族の方々はずっと悲しみと向き合い続けていた。発生当時、テレビのニュースで増田さんが取材を受けているのを見た記憶がある。涙を流しながらカメラの前に立つ姿から、自然災害の恐ろしさが身に染みた。丹念に遺族と接した記者の姿勢にも胸を打たれる。