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2016.01.05 update.

20歳の過ち 更生誓う

熊本日日新聞社 | 2015年12月19日掲載

20歳の過ち 更生誓う 熊本市 コンビニ強盗未遂の男性

20歳の夏、悩んだ末に過ちを犯し、捕まった男性がいる。6月、熊本市北区のコンビニで発生した強盗未遂事件。店長は思いとどまるように説得した。彼女は「あなたの子を産む」と励ました。自らの甘さと人の優しさに気づかされ、社会に戻った。「未遂でよかった」。更生を誓い、額に汗して働く。

▽                   ▽

ブランコに座り、夜空を見上げた。星がまたたき、静まり返った住宅街の公園。数十メートル先に、コンビニの看板が煌々[こうこう]と光を放つ。男性は6月24日午前3時すぎ、この公園でひとり考え込んでいた。金が必要だった。強盗をせずに解決できる方法はないものか-。

交際相手や友人の顔が浮かぶ。1時間悩んだが、思い付かない。やるしかない。ヘルメットをかぶり、脇に包丁を挟んでコンビニへ向かった。

「金を出せ」。男性店長(69)に包丁を向けた。心臓の鼓動が速まる。「やめなさい」と店長。もう一度「けがさせたくない。金を出せ」と脅したが、店長は「やめたほうがいい」と動じない。続けて「警察を呼べ」と女性店員に指示した。やばい。何も取らずに逃げた。10日後、男性は県警に逮捕された。

男性は県内の高校を中退後、飲食店や工場など職を転々とした。事件当時、派遣社員として解体業に携わっていたが、収入は不安定だった。そんな時、同居中の交際相手の妊娠が分かった。

「子どもを育てるなんて経済的に無理」。中絶してほしいと頼んだが、彼女は「産む」と言う。自分の母親も友人もそろって「産むべきだ」。不安ばかりが募った。

事件の夜、彼女とけんかした。「こうなったら、中絶費用を工面して説得するしかない」。自宅近くのコンビニが思い浮かんだ。「夜中に開いていて、人も少ない。10万円くらい手に入れられるのではないか」。安直な考えだった。

◇   ◇

逮捕後、保釈されるまで約3カ月、留置場と拘置所で過ごした。接見に来た彼女は男性を責めず「一緒に頑張ろう」と励ましてくれた。「迷惑かけてごめん。子どもを産んでほしい」。彼女に宛てた手紙を書き続けた。反省や再起を誓う言葉を重ねて。

10月22日、熊本地裁で判決。裁判官は「反社会性が高い犯行で実刑も考えられるが、産まれる子どものため更生を誓っている」として懲役3年、執行猶予4年を言い渡した。そして付け加えた。「止めてくれた店長さんにも感謝してください」

温情あふれる判決に「自分は甘えていた。店長さんに止められ、失敗してよかった。人の意見を聞き、しっかり働く大切さを痛感した」。

現在、親族に紹介された県南の建設会社で働く。早朝からの現場作業は若い体にもこたえるが、「雨で休みになるのが惜しい。産まれてくる子どものためにも、稼げるだけ稼ぎたい」。今月下旬にも誕生予定だ。

あの時、男性を止めた店長は「犯人の目と声で、この子はまだ若い、説得すれば何とかなると思った」と振り返る。コンビニ経営29年の接客で養った観察力が生きた。

検察庁には「できるだけ罪を軽くしてあげて」と伝え、執行猶予付き判決に安堵[あんど]したという店長。男性の近況を知り、「それはよかった。いろんなことがあるだろうが、前向きに生きてほしい」と目を細めた。(中村勝洋)

20歳の過ち

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VOICE!happy news特派員・moomin 18歳 大学生 熊本県

自分と近い20歳ということで目がいって、読んでみるとドラマのような感動的な内容だった。 一度罪を犯したとなると、その後の人生に大きく響いてしまう。更生したいと思っても周りの目が冷たかったり、なかなか採用が決まらなかったりと困難の連続で、そのことから再び罪を犯してしまうということもありえた。だが、家族や彼女に支えられ、こうして今しっかりと自分で仕事をしてお金を稼いでいることは、本当にありがたい話。自分は被害者であるにもかかわらず、検察側に男性の罪をできるだけ軽くするように頼んだ。きっと、彼のこれからの人生を本気で考えてのことなのだろう。 男性には、生まれてくる子供のためにも、過去を乗り越えてがんばってほしい。

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