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2017.04.12 update.

寄せ書き日の丸 長男の元に

産経新聞社 | 3月18日掲載

寄せ書き日の丸 長男の元に 米国から川越市へ「縁ある人に渡して」

第二次大戦中、川越市の男性が出征時に戦地に持参したとみられる「寄せ書き日の丸」が今月、川越市役所に郵送で届いた。旗には同市の吉田丑三(うしぞう)さんの名前が大きく書かれており、市の調査で長男の会社員、実さん(55)が市内に住んでいることが判明。日の丸は17日、市役所で実さんに返還された。実さんは「寄せ書きには近所の人とみられる名前もある。父の墓前に報告したい」と話した。(川畑仁志)

同市福祉推進課によると、日の丸は縦約65センチ、横約85センチ。絹のような素材で花の地紋があり、「祈武運長久 六月十五日 吉田丑三」とあり、周囲には大勢の名前が墨で書かれていた。虫食いはほとんどなく良好な保存状態で、折りたたんで封筒に入れられて14日、市役所に届いた。

添えられた手紙には「アメリカ在住の90歳近いアメリカ人が家の片付けをしていた際に見つけたもので、縁ある人に渡してほしいと頼まれた。私も高齢のため、川越市で渡してほしい」という内容が記されていた。差出人の名前はなく、東京都の吉祥寺駅前の消印があった。

同課の担当者が日の丸にあった「埼玉県川越市小仙波町字赤座」という住所を調査。現在の同市西小仙波町に当たり、地域の民生委員や自治会長らに問い合わせ、実さんが住んでいることが判明したという。

実さんによると、丑三さんは先の大戦で台湾やフィリピンなどに出征。帰還後は石材店に勤務し、戦後生まれの実さんに戦争体験を話すことはなく、昭和51年に亡くなったという。

実さんは今後、自治会長に寄せ書きに書かれた名前を確認してもらった上で丑三さんに報告するという。日の丸を手に取り、「おそらく戦地でなくしたものだろう。手元に戻ってきたのは、平和な世の中になり、国際交流が市民レベルで進んでいるからだと思う」と感慨深げに話した。

【写真】父、吉田丑三さんの「寄せ書き日の丸」を見つめる長男の実さん=17日、川越市元町

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VOICE!いけどう 21歳 学生 東京都

国旗はその国の象徴であり、戦場へ自国の国旗に寄せ書きを記したものを持参するという行為は、ゆえに政治的なものであったかもしれない。しかし、幾年もの時間を経たこの国旗は、亡くなった親族の遺物というあくまで個人的な持ち物として見つけ出される。家族にとってそれは、故人の生きた証にほかならない。戦争は悲惨なものだが、その中にも人々の暮らしがあり、小さな笑いや幸せがあったこともまた、思い出されてしかるべきだろう。

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