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2015.01.04 update.

がん乗り越え笑顔届ける

熊本日日新聞社 | 2014年11月22日掲載

バルーンアーティストの小川亜矢子さん(35) がん乗り越え笑顔届ける [略歴] [連載] ガン 癌

本文  真っ赤な丸い鼻に、白い水玉模様が入った赤と黄色のエプロン。ピエロ姿で色とりどりの細長い風船をポップな音楽に合わせてねじり、組み合わせる。飛行機やアヒル、人気アニメのキャラクターなどが次々に出来上がっていくと、見ている人の表情は自然と和らいでいく。

バルーン(風船)アーティスト「あややん」こと小川亜矢子さん(35)は、5人の子どもの母親。その子育ての真っ最中、がんが襲い、再発も乗り越えてきた。県内各地の学校や病院、福祉施設などを訪れながら活躍する小川さんの原動力は「たくさんの人に笑顔を届けたい」という思いだ。

■   ■

2012年7月に5人目の子どもとなる長女を出産。家族7人での生活が始まって間もない10月、喉に違和感を覚えた。不安を抱えながら受診すると、甲状腺がんと判明。「これからもっと子育てを頑張らなきゃと思った矢先のこと。いつまで子どもと一緒にいられるんだろうと不安になり、病院から帰る車中では泣きっぱなしだった」

翌月に手術。無事成功したが、薬を毎日飲まなくてはならず、慢性的な体調不良もあった。手術後の自分をなかなか受け入れきれず、気持ちが沈んだ状態が続いたという。

そんな小川さんが前向きな気持ちになれたのは、手術から半年後。看護師だった頃の元同僚から「東京の有名バルーンアーティストが病院でショーをするので、手伝わないか」と誘いを受けたのがきっかけだった。

ショーで手伝いをしているうち、どんどん引き込まれていく自分に気付いた。観客席に目をやると、変幻自在に形が変わるカラフルな風船を見て、入院中の子どもたちが目を輝かせているのが分かった。

「がんになってから未来への漠然とした不安が毎日付きまとっていた。でも、風船はつらい状況にいた私や子どもたちを笑顔にしてくれた。自分も誰かを笑顔にしたい」

趣味で楽しんでいたバルーンアートだったが、ショーを境に東京、大阪での研修会に参加するなど意欲的に技術を磨いた。メークの仕方やバルーンを使った創作ドレスの作り方なども学んだ。

■   ■

福岡市から夫の英幸さん(36)の実家がある八代市に転居すると、1人で舞台に立つようになった。しかし、14年2月、また悲劇が訪れる。リンパ節へのがん再発だ。「再発はないだろうと思っていただけに、分かった時はがくぜんとした」

「子育てだけに専念した方がいいのではと何度も自問自答した。でも、自分が頑張っている姿を5人の子どもたちに見せたい」と舞台に立つことは諦めなかった。放射線治療を続け、9月にリンパ節を切除した。

手術後は、テレビ出演などもあり、小学校や福祉施設からの出演依頼が相次いだ。現在はショーの幅を広げようと、ウクレレの特訓中だ。「ショーの最中にお客さんをどこまで引き込めるか。演出やバルーン技術はまだまだ磨くことばかり」と笑う。

「バルーンはつらいことを忘れさせてくれるし、小さい子どもから大人までみんなが楽しめる。自分の姿が誰かの励みになったとしたら、すごくうれしい」。バルーンショーの魅力を伝え、より多くの人の笑顔と出合うことが何よりの楽しみと話す。

5人の子どもたちから「今度はいつ『あややん』になるの」とせがまれるという。愛する家族に囲まれ、小川さんは優しくほほ笑んだ。

【こんな人】

◇おがわ・あやこ 1979年生まれ。福岡市出身。高校卒業後、病院に勤務し26歳で看護師に。「あややん」のキャラクター設定は「おっちょこちょいだが前向きな女の子」。八代市で会社員の夫(36)と双子の長男、次男(8)、三男(6)、四男(4)、長女(2)の7人暮らし。

【記者ひとこと】

「誰とも会いたくないし、話したくない。ふさぎ込んだ時期も長かった」。素顔の「あややん」は、柔和な表情で、闘病中の苦しんだ経験を話してくれた。

5人の子育てに奮闘しつつ、バルーンアーティストとして活躍するパワフルさは、どこからくるのだろう。見ているだけで心が軽くなり、明日に向かう元気をくれる。そんな「あややん」のショーをこれからも楽しみにしている。(樋口琢郎)

 

次回は、農業によるホームレスの自立支援に取り組む小島希世子さん(南小国町出身)です。

 

熊07

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VOICE!happy news特派員・yamabiko 21歳 大学生 熊本県

35歳とまだお若いにもかかわらず、がんとなってしまった小川亜矢子さん。5人の子供を抱えながらも、そして病気と闘いながらも、人を笑顔にしたい、とバルーンアーティストとして活動されている。この記事を読み、私は今を一生懸命生きてるかと考えてみると、貧乏ながらも特に不自由なく暮らしている私は、その有難さを忘れ、ぼーっと生きてるなぁと我ながら恥ずかしくなった。今この瞬間を大事に生きなければと感じた。だが、しかしそう思うのは今この記事を読んだからであり、何日か後にはもう忘れ、記事を読む前の私に戻っているにちがいない。なぜそう思うか。それは今までがそうだったからだ。テレビ、新聞、雑誌など様々なメディアで頑張っている人たちを知り、私も頑張らなきゃと奮起しても、いつの間にか忘れ、ぼーっと生きている。でも人生を思い返してみると、ぼーっと生きていた記憶しかない、なんてことにはなりたくない!自分の人生をしっかり歩むためにも、これからは定期的に頑張っている人たちの記事などに触れて、自分も頑張らなきゃ、と継続的に奮い立たせていこうと思う。その第一歩として新聞を毎日読もう…

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