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2016.07.05 update.

「小さな小学校」良さ生かす

河北新報社 | 2016年6月11日掲載

「小さな小学校」良さ生かす/理解度に合わせて学習指導/地域の防災、交流、子育て拠点/兵庫・香美町/児童、合同授業で切磋琢磨

少子化などを背景に全国で公立小学校の統廃合が進む中、少人数のまま独自の学校運営に取り組む自治体がある。学校には地域の拠点という役割もあり、統廃合にはマイナス面も。「小さな学校」の良さを生かし、特色ある運営で注目を集める兵庫県香美町を訪ねた。

<「世界が広がる」>
山あいの豊かな自然の中にある村岡小に、約6キロ離れた兎塚(うづか)小からスクールバスが到着した。町立の両校の2年生で「合同授業」を行うためだ。
体育では村岡小の11人に兎塚小の12人が加わり、倍の人数でのドッジボールに児童は大喜び。男子児童は「いつもは人数が少ないから、一緒だと楽しい」と笑顔を見せた。
算数はプリントを使った授業。児童23人を両校の教諭ら5人が指導した。教諭1人当たりの児童が4、5人になり、児童の理解の度合いによって授業を進められる。
村岡小の田路幸代教諭は「他校の子どもたちと交流することで、児童は刺激を受けています。違う考えを知り、世界が広がっている」と話す。教諭にとっても、他校の指導法を学ぶ良い機会になっているという。
香美町の小学校10校のうち9校は、どの学年も1学級か複式学級だ。小規模校同士の合同授業は3年前に始め、近くの学校などでグループを組み、年10回実施。一般的に小規模校の課題とされる、集団活動への適応や切磋琢磨(せっさたくま)し合える環境づくりを合同授業で補いながら、少人数の強みを生かした学校運営を目指す。

<地域と協力推進>
学校の存続は、周辺地域の将来像とも密接に関わる。村岡小の石井一彦校長は「この地域では1970年前後に小学校が統廃合され、住民はそれから地元が寂れたと実感している」と話す。学校は学びの場というだけでなく、故郷の将来を担う人材を育て、防災や交流、子育ての拠点にもなる。香美町は学校と地域が協力した「ふるさと教育」など、地元に信頼される学校づくりに力を注ぐ。
小規模校の合同授業は広島県安芸太田町や徳島県阿南市などでも実施。徳島県教委は「統廃合に歯止めをかけたい」と話す。文部科学省の学校基本調査によると、近年は年間250以上の公立小が減少。統廃合などによって、標準規模とされる12~18学級は増加傾向だが、5学級以下の小規模校は減少してきている。
宮崎県五ケ瀬町の教育長時代に小規模校の連携を進めた兵庫教育大大学院の日渡円教授(教育行政)は「学力低下を理由に統廃合を進める例があるが、学力は規模の問題だけでは測れない」と指摘する。「地域でより良い選択をするために、教育環境なのか、財政問題なのか、何のための統廃合かをきちんと明らかにして議論できるよう行政が環境を整えることが大切だ」としている。

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VOICE!happy news特派員・平田真莉子 20歳 大学生 宮城県

そういえば、通学路ですれ違った人みんなと挨拶を交わしていたっけ。のどかな私のふるさとでは、地域の人は家族のような存在だったことを思い出しました。少子化などにより公立小学校の統合が進む中、他校と合同授業をするなど工夫をこらし「小さな小学校」を守る取り組み。防災の拠点になったり、まちの活気になったり。学校を守ることは地域にとって意味のあることだと思います。地域とのつながりが強い小さな学校は、子どもを保護する面でも役立っている気がします。「おはよう、いってらっしゃい!」。人通りの少ない道。幼かった私は、おじさんの一声が自分を見守ってくれているように感じていました。地域にとって、子どもにとって、よい環境を――。独自のやり方で学校を運営する自治体を知り、パッと明るい気持ちになりました。

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