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2016.05.02 update.
ウルグアイ前大統領・ムヒカさん講演
孤独が最大の貧困 人生の時間尊重 世界をより良くしよう
「世界でいちばん貧しい大統領」の愛称で知られ、初来日した南米ウルグアイの前大統領、ホセ・ムヒカさんが、東京都府中市の東京外国語大で講演した。人類の未来を担う若い世代に熱く語りかけ、会場に入りきれなかった学生は屋外に設置されたモニターで話に聞き入った。講演の要旨は次の通り。
私たちが生きていることは奇跡だ。いろいろな出会いがあり、チャンスがある。人間は自分の人生を方向付けることができる。大義のために生きる―それは私たちの意志にかかっている。世界が今後どうなっていくのか。世界をより良いものにしようという意志を持ちましょう。
スーパーで物を買うことはできるが、人生の何年間かをそこで買うことはできない。あなたが何かを買うとき、それは人生の一部の時間(を使って得たお金)で払っているのだ。人生の時間を尊重しなければならない。人生を享受するための自由な時間が必要だから。
人生には愛のために多くの時間が必要であり、他者が必要だ。貧しい人というのは、コミュニティーを持たない人であり、伴走してくれる人がいない人のこと。最も大きな貧困とは孤独です。私は貧しいわけではない。単に質素が好きなだけだ。本当にやりたいことをできる自由がある。物が必要なわけではない。
文明の発達によって、素晴らしい技術が生まれた。しかしギリシャの古い哲学によれば、全ての物事には節度が必要だ。今、市場が動物のように加速度的に動いていて、コントロールできない状態になっている。
人類がこれほど大きな力を持ったことはなかった。 莫大 な軍事費を使いながら、これを止めることができない。海の汚染を知りながら、なすすべがない。何と恥ずべきことか。多くのものを浪費しながら、大切なことに目を向けてこなかった。生産性は高まったのに、分配の仕方が悪いので、わずかな人が恩恵にあずかり、多くの人が不満を抱えている。
人間は完璧な存在ではない。間違いを犯すし、矛盾も抱えている。だからこそ政治が必要だ。完璧な社会などあり得ないのだから、いかに共存できるのかを考えるのが政治であり、社会全体のことに心を砕く。
民主主義も完全ではない。社会をより良くするために闘わなければならない。特に大学で学べるチャンスを得た人には大きな責任がある。チャンスを与えられなかった人、老人や小さな子どもに対しての責任がある。
私は悲観主義者ではない。人生で最も重要なことは勝利することではなく、歩くこと。転ぶたびに起き上がることです。そして自分の意志を持って生きることです。皆さんもどうぞ、よく生きてください。
私の考えに同調してほしいとは思わない。皆さんにとって、何が重要なのかを、自分の頭で考えてほしい。
日本では希望を持ちにくくなっていると聞いた。人生を信じられるようにしてください。生きるためには希望が必要なのです。
【写真説明】大学生を前に講演するホセ・ムヒカさん=東京都府中市の東京外国語大
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VOICE!happy news特派員・あっちむいてほい 23歳 大学生 岡山県
講演は東京外国語大学で行われ、「会場に入り切れなかった学生は屋外に設置されたモニターで話に聞き入った」とある。日本人が抱える社会に対する「違和感」のようなものを的確に指摘したムヒカさんのすごさを実感するとともに、皆が心のどこかで感じていることは同じなのだということに驚いた。一人ひとりが「孤独」を抜け出て、自分の人生に向き合うこと、そして皆で力を合わせる方法を探ることが、少しずつでも社会は変わる、という希望を生むことになるのだろう。ムヒカさんの講演の中の「大学で学べるチャンスを得た人には大きな責任がある」という言葉を肝に銘じて、やりたいことに打ち込めるこの自由な時間を大切にしたい。