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2014.02.19 update.
熱海市西山町の来宮神社すぐ近くに、80歳を機に理髪店を新装した女性がいる。50年以上営業を続けてきた店舗を道路の拡張工事に伴って取り壊したが、常連客や友人らに背中を押されて現役続行を決意した。亡き夫や娘との思い出を胸に、今日も笑顔で来店客を迎え入れている。
女性は菅原弘子さん(80)。理容師免許を持っていた菅原さんは1959年に結婚し、東京から移り住んだ。以来、夫の嘉悦さんとともに、整髪に訪れる客との触れ合いを通じ熱海の盛衰を見守ってきた。
70年に当時4歳の三女が理髪店の目の前の道路で交通事故に遭い、命を落とす悲しい体験も。2011年に嘉悦さんが他界、県道の拡張で旧店舗を取り壊すことにもなり、引退の思いもよぎったが、理容師を続けたいという熱意が勝った。「娘が今も見守ってくれている。離れられない」
新店舗は旧店舗のすぐ横に建てることにし、昨年12月5日にオープンした。小規模だが、友人が雑談をしに立ち寄れるよう待合スペースの広さは確保した。道路側に窓を設け、来宮神社や熱海梅園へ向かう行楽客の姿を眺めて待ち時間を楽しんでもらえるようにした。
真新しい「菅原理髪店」の看板は、高齢者が「安らぐ場」のシンボルにもなっている。30年以上通う近所の芝原キミ子さん(90)は「毎日顔を合わせるから、互いの安否確認にもなるのよ」と話す。
同年代の知人から「椅子から落ちた」という電話を受けて自宅に急行し、臨時休業した日もあったが、菅原さんは「江戸っ子だから頼られると自然に動いちゃう。友達が一番大切だから」と笑う。
歩道沿いの花壇に植えた草花も育ち始めている。菅原さんは「まだ頑張れる。頑張れば娘も喜んでくれるはず」と、仕事に精を出している。
【写説】新装開店した店内で、常連客と談笑する菅原弘子さん(右)=15日、熱海市西山町の菅原理髪店
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VOICE!happy news特派員・うんの 23歳 静岡県
お客さんのために、亡き娘のために。 自分のためだけでなく、誰かのために仕事に精を出す菅原さんの強さに心が温まり、また刺激を受けました。 私も1年前に就職し、社会人人生を歩み始めました。誰かのために仕事をする、という実感はまだ少ないのですが、60歳を過ぎても仕事を続ける両親に教えられた「仕事を好きでいること、楽しむ気持ち」は大切にしています。 仕事への熱意だけでなく、お客さんとの絆を大切にして現役の道を走り続ける菅原さんは、私の両親と同じく社会人の先輩です。新しい店舗で90歳、100歳の節目を迎える菅原さんの姿を、また新聞記事で読める日を楽しみにしています。