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2014.02.26 update.
踊るようにVサインを決める女子、ズボンのポケットに両手を入れて少し悪ぶる男子、両手を目や耳、口に近づけ「見ざる言わざる聞かざる」のポーズでおどける女子3人組…。熊本県立南関高(同県南関町)の校長室に、今春卒業する3年生31人分の全身像が並ぶ。生徒たちの笑顔やすまし顔は命を吹き込まれたように生き生きしている。
制作したのは下田真一郎校長(60)。同校は3年後の2016年度末に再編で廃校となる。下田校長自身も来月で定年退職。高さ約15センチの像の一体一体に「廃校になっても母校の思い出は永遠」との思いを込め、3月1日の卒業式で一人一人に贈る。
制作は13年9月、全員の写真撮影から始まった。校長室で生徒たちに好きなポーズを取らせ、頭部や立ち姿を前後左右、斜め前から撮った。「素直なのに悪ぶる男子、リーダーシップが光る女子…と個性派ぞろい」。生徒たちと向き合い、再確認できた。
バルサ材や細いアルミ管などで骨格を作り、石粉が原料の石塑(せきそ)粘土で肉付け。何度も写真を確認しながらへらで整え、生徒たちの個性あふれる姿を再現した。費用はすべてポケットマネー。像1体の完成まで約10時間。自宅に持ち帰り、今月中旬までに完成させた。
下田校長は同校で13年間、美術教諭を務め、10年4月、校長として再着任した。思い入れのある学校だったが、廃校は既定路線。「生徒たちに南関高に通って良かった、と感じてほしい」と思い、11年春に校舎をモチーフにした缶バッジ、12年は鉛筆描きの似顔絵、13年は石塑粘土の頭像を卒業生に贈った。
卒業生から毎年「今年は何?」と聞かれるようになり、記念品は次第に手が込んだものに。「自分の定年と重なる今春はいわば集大成。その子らしい表情と姿を再現してあげよう」と、時間のかかる全身像の制作に踏み切った。
卒業式はもうすぐ。女子生徒2人は「像の私と会うのが楽しみ」「校長先生が作る最後の記念品かな」。男子生徒は「夢はグラフィックデザイナー。クリエーターとして尊敬する校長先生の作品は励みになる」。生徒の心待ちにしている声が聞こえてくる。
「旅立つ生徒たちと濃密な時間を共有できて幸せ。私がもう少し若かったら最後の卒業生分まで贈れたのに…」。下田校長は寂しさ交じりの笑顔で31体と向き合った。
(木村貴之)
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VOICE!happy news特派員・umetaira 25歳 福岡県
熊本県南関高校の校長先生が卒業生の全身像を作ったというニュース。同校は2016年度に廃校、校長先生ももうすぐ退職とか。一人一人の個性が出ている像。もらった方は一生の記念になるだろうな。私自身も高校生活が楽しくて楽しくて仕方がなかった。部屋に飾っておいたら見る度に「青春」の思い出がよみがえってきそう。