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2015.03.10 update.
伊那市境のフリーライター宮下武久さん(47)が、「移動販売車がゆく買い物弱者を支える『にこやか号』奮闘記」を出版した。上伊那郡箕輪町で営業する移動販売車の客とスタッフの温かなやりとり、買い物弱者を取り巻く課題などを追った。宮下さんは、買い物弱者は山間地だけでなく中心市街地にもいるとし、この本が「人口減少対策や地方創生と切り離せない問題として目を向けるきっかけになれば」と話す。
にこやか号は同町の「泰成運輸」が5年前、リーマン・ショック後の景気悪化を受け、社員の発案で始めた。精密機器を中京圏に運んだ帰りに海産物を仕入れ、地元農産物などと一緒に当初は同社駐車場で販売した。
現在は、保冷設備のある特注の専用車で週6回、町内計50カ所を巡回。木・金曜にはお年寄りらの見守りも兼ね、希望のあった家を訪ねて販売する。柴みずほ専務(59)は「採算の取れる事業ではないが、やめれば困る人や楽しみに待ってくれる人がいる。何としても続けたい」と話す。
宮下さんは昨年3月から8カ月間、にこやか号を取材した。常連客が来ないと体調が悪いのかと心配し、購入した商品を客の家まで歩いて運ぶスタッフの姿も描いた。移動販売の取り組みとして、みなみ信州農協(飯田市)の「ミニファミ号」、東筑摩郡筑北村商工会の「おたがいさまネットワーク」も紹介した。
宮下さんは「本当に困っている人もいれば、話し相手が欲しくて来る人もいる。年を重ねても自分で選んで買い物をしたいという気持ちを大事にしたい」と話している。表紙の絵は妻の志乃さん(45)が描いた。
川辺書林(長野市)刊。四六判、222ページ。1512円(税込み)。県内の書店で購入できる。
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VOICE!happy news特派員・山田 佳奈 21歳 大学生 長野県
商品を乗せて買い物弱者の元へと運ぶ移動販売車。しかし、届けるのは商品だけではない。一人暮らしの高齢者が孤独死したというニュースも、まだ目に新しい出来事だ。移動販売車「にこやか号」は、商品と一緒に人の心を届けている。心と心をつなぐ販売車だ。出版された本を通して、このすてきな取り組みがたくさんの人の心に届いてほしい。