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2015.06.19 update.
農村歌舞伎好きツイート3人娘 知らざぁ 動画で見せやしょう 「若者に魅力伝えたい」-湖西、雄踏発
江戸時代に庶民の娯楽として全国各地で始まり、近年は高齢化や若者離れが進む農村歌舞伎。そんな地域の伝統芸能を守ろうと、湖西市と浜松市西区に住む20代の女性3人が「三遠南信歌舞伎青年部」を立ち上げた。歌舞伎を現代風にアレンジし、若者向けの動画や画像をツイッターで発信。「歌舞伎の魅力を伝えたい」と、思いは熱い。
発起人は湖西歌舞伎保存会の佐原希依さん(21)。祖母の影響で小学1年から子供歌舞伎を7年間続け、高校卒業後に舞台に復帰した。芸歴は計10年にもなるが、プロの歌舞伎は見たこともない。「日本の伝統歌舞伎より、地域に根付く農村歌舞伎が好き。普通の女の子にもできるし」と魅力を語る。
ただ、以前は小中学生もたくさんいた同保存会も、現在の会員数は子供1人を含む10人前後。歌舞伎の衰退に不安を抱く中、昨年11月の「三遠南信ふるさと歌舞伎」で雄踏歌舞伎保存会(浜松市西区)の野末梨花さん(21)と出会った。
お酒を飲みながら、交わしたのは延々と歌舞伎の話。「この演目のこの場面が好きとか。普段は同世代の女の子とこんな話ができないからうれしくて」と佐原さん。そして、若い世代が進学や就職で歌舞伎をやめていく現状についても思いが一致した。「若者に歌舞伎の楽しさを発信したい」
雄踏保存会の平出優季さん(24)にも声を掛け、「青年部」を結成した。愛称は、歌舞伎メークの「くま取り」に由来して「kumadori」。ツイッターの30秒動画機能を活用し、難しい歌舞伎の演技を現代風にアレンジして投稿する。公演情報や舞台裏も紹介するという。
3人が初めて顔を合わせた16日、早速動画の撮影に取りかかった。宴会グッズのカツラと、100円ショップで買った化粧道具で役作り。「ナンパみたいで面白いから」(佐原さん)と、女装して人を襲った男に侍が声を掛ける「三人吉三巴白波(さんにんきちさともえのしらなみ)」の一場面を“パロディー風”に演じた。
仕事や大学、試験勉強など多忙な3人。「次にいつ集まるか分からないが、20代の女子らしく“ゆるく”続けたい」という。そして「歌舞伎の敷居は決して高くないことを知ってほしい」と発信を続けていく。
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【農村歌舞伎】
素人歌舞伎とも呼ばれ、地域特有の伝統芸能として伝わる。江戸から明治時代にかけて各地で始まり、村祭りなどで披露される庶民の娯楽として親しまれた。県内では、湖西、雄踏のほかに浜松市北区の横尾歌舞伎、天竜区の浦川歌舞伎などがある。近年は担い手が減少し、一部では継承が困難になりつつある。
【写説】歌舞伎を現代風にアレンジし、ツイッターで発信する(右から)佐原希依さん、野末梨花さん、平出優季さん=16日、湖西市民会館
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VOICE!happy news特派員・うんの 25歳 会社員 静岡県
歌舞伎は学生のときに初心者向けの作品を見たきり。豪華な衣装に身を包んだ歌舞伎俳優の迫力ある演技に感動したが、そう頻繁には足を運べない、少し気合いを入れて観るものという感じがした。 この記事を読むまで、農村歌舞伎という存在をよく知らなかった。敷居は低いが、伝統あり。手の届く歌舞伎の楽しみ方に興味を持った。「格調高い」とは言えないかもしれないが、地域の人に愛されてきた芸能が衰退してしまうのは寂しく思う。昔から受け継がれてきたものをそのまま伝えることだけが継承ではないはず。ツイッター発信という現代に馴染むかたちで、より多くの人に農村歌舞伎の魅力が広まってほしいと思う。