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2015.08.21 update.
外国人のママ 孤立させない
「言葉の壁」相談の幅広がる 市民有志が子育て支援
子育てしている外国人が孤立しないようにと、福岡県内の市民グループなどによる支援の動きが広がっている。言葉の壁で地域とつながれず、特に幼い子を育てていると家にこもりがちになる人が多いためだ。国際結婚や留学、仕事の関係で日本で子育てする外国人は今後も増えるとみられ、支援者たちは「子どもの成長にとって、保護者の心の安定はとても大切なこと」と取り組みの広がりを願っている。
福岡市西区の集会所。外国人の親から生活相談を受ける「ハッピーサロン」に小学生の子をもつタイ人の女性が姿を見せた。漢字が読めないため、学校から配られたプリントの内容が分からないという。「ゼッケンは体操服の前後に縫い付けてください、と書いてありますよ」。日本人スタッフの大塚佳英(よしえ)さんが説明すると、ほっとした表情を見せた。
サロンは2年前に始まった。きっかけは、小学校で日本語指導員を務める大塚さんが、6人の子を育てるエジプト人女性と出会ったことだった。幼児がいて外出がままならず、女性は日本語教室に通うことを断念。子どもは学校でプリントを配られても「どうせ、お母さんは読めないから」と女性に渡さず、先生たちとの行き違いも絶えなかったという。
現在は月2回、主婦など同じ校区のボランティアが相談に乗る。「子どもを絵画教室に通わせたい」といった要望があれば、一緒に街を歩いて案内することもある。これまでに小学生や園児がいる中国やインドネシアなどの約10世帯を支援してきた。
福岡市早良区西新の子育て支援施設「西南子どもプラザ」では月1回、外国人の親を対象にした「インターナショナルデー」を設けている。市の委託を受けた西南学院大が運営し、英語を話せるスタッフが相談に応じる。スタッフの世戸口洋子さんは「子育ての大変さも楽しさも分かち合える場。気軽に遊びに来てほしい」と呼び掛ける。
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福岡県久留米市上津町の久留米ベテルキリスト教会。フィリピン人の女性たち約20人が車座になり、タガログ語と日本語で互いの悩みを語り合っていた。5年ほど前から月1回開かれている「子育て井戸端会」だ。
久留米市内で暮らすフィリピン人は約900人。子ども連れで礼拝に訪れる女性も多く、牧師の吉田一誠さん(38)は「夫が子育てに無関心」という女性の悩みや「外国人の親を恥ずかしいと感じる自分が嫌い」という子どもからの相談を聞くことが多かった。「親が母語で話せる環境をつくり、親子をつなぐサポートができたら」と考え、井戸端会を始めた。
参加者の一人で、日本人男性と結婚している檍(あおき)ララさん(49)は「日本語だと言いたいことを家族に伝えきれず、子どもを感情的にしかってしまうことも多かった」と打ち明ける。井戸端会には初回から顔を出しており「子育ての先輩の体験を聞き、子どもの気持ちを考えるようになりました」と笑顔を見せた。
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ハッピーサロンは主に校区在住者が対象。西南子どもプラザ=092(846)9207=と、久留米ベテルキリスト教会=0942(21)8638=は広く相談を受け付ける。 (国崎万智)
外国籍の子ども 県内3874人
法務省入国管理局によると、福岡県内に暮らす外国籍の人の数は昨年12月現在で5万7696人。うち子ども(0〜14歳)は3874人で、5年前に比べ532人増加している。言葉などの壁を抱えながら子育てをする家庭は増えているとみられるが、県は「支援を必要とする家庭の世帯数は把握していない」(交流第一課)。外国人の相談を多言語で受け付ける窓口は設けているものの、子育て支援に特化した事業はないという。
このためサポートの動きはまだ一部の地域に限られる。
外国人の子や女性を20年以上支援している福岡市の市民団体「アジアに生きる会・ふくおか」の井上幸雄さん(60)によると、障害のある子をもつ外国人女性が、夫からの協力を得られず追い詰められ虐待につながりかねないケースもあったという。井上さんは「国際化の時代、身近な地域に支援活動が広まるよう、民間の取り組みを行政がバックアップする仕組みも整えてほしい」と提言する。
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VOICE!happy news特派員・k.m 24歳 会社員 熊本県
子育て中の外国人は言葉の壁を抱える上、幼い子どもがいるため外出しづらく二重の「孤立リスク」を抱えている。子どもが安心して過ごすためには、親の心の安定が欠かせない。