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2015.08.06 update.

菊川・赤レンガ倉庫 解体危機から文化財に

静岡新聞社 | 2015年7月18日掲載

JR菊川駅南側の商店街に立つ赤レンガ倉庫。毎週木曜の夜、管理運営するNPO法人「菊川まちいき」の会議が開かれる。120年の歳月を重ねた趣ある空間で、次のイベントの計画に会話が弾む。今では“当たり前”となった時間。だが、ここまでの道のりは平坦ではなかった。倉庫は長い間、存廃をめぐって揺れ、ほんの3年前までメンバーは保存運動に奔走していた。
倉庫は明治時代、荒茶のブレンドなどを行う茶再製工場の一部として建てられた。昭和の終わりに周辺の区画整理事業が始まり、当時の菊川町と地元が倉庫を誘客のために活用する計画をまとめた。ところが2004年、町が突如「保存が難しい」と地元に通告。05年の合併で菊川市になっても解体方針を示したため、住民による保存運動が本格化した。
当初は「行政に何を言っても分かってもらえなかった。無力感もあった」とNPOの大橋隆夫理事長(68)。支えとなったのは運動を知った外部の人々の声だった。特に、建築の専門家による調査で倉庫の学術的な価値が認められ、住民がその歴史を見詰め直したことが大きかった。倉庫について学ぶたびに「お茶のまち菊川の発展のルーツ」との誇りや愛着を強く抱いた。
倉庫での文化事業も重ね、活用策の在り方を示し続けた。粘り強い取り組みが市を徐々に動かしていく。管理主体として発足した現在のNPOが12年に隣接民有地を購入。市が倉庫の建っていた市有地との等価交換に応じ、保存が実現した。
10年近くに及んだ運動が残したのは、倉庫だけではない。NPO理事で倉庫の所有者でもある桜井恒太郎さん(70)は、この間に生まれた人のつながりに「価値を感じる」と話す。「まちづくりの楽しさに目覚めた」というメンバーもいる。
倉庫は14年に国の登録有形文化財となり、コミュニティー活動の拠点としてにぎわう。保全修理など課題も多いが、「自分たちが住みやすく、魅力あるまちになるよう、子供たちにも大切さを伝えていきたい」。理事の長谷川智子さん(51)の言葉に力がこもった。
(掛川支局・関本豪)

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■活性化・成功の秘けつ
・住民が自ら歴史を学び、価値を再認識した
・運動の中で新たな人のつながりが生まれた

【写説】赤レンガ倉庫を訪れたボーイスカウトの子供たちに、歴史を説明するNPOのメンバー=12日、菊川市堀之内
【地図】菊川市堀之内

静岡新聞・赤レンガ倉庫

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VOICE!happy news特派員・かきだ 25 会社員 静岡県

先日、地元の市議会議員と住民の意見交換会に参加した。住民は多種多様な要望を次々と出し、煮え切らない態度を見せる議員に声を荒げる場面もあった。市の予算に意見できる議員を頼るのは仕方ないが、甘えるばかりでなく市民からも知恵を出すべきではないかと思った。赤レンガ倉庫の文化財登録は市民主導で残した成果。財源が乏しく行政の予算に限りのある今こそ、この事例から学ぶべきことは多い。

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