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2016.01.08 update.

若年性認知症、社会に橋渡し

西日本新聞社 | 2015年11月12日掲載

若年性認知症 社会に橋渡し

65歳未満の若年性認知症の人や家族を支援する専門のコーディネーターが、2016年度から全都道府県に順次配置されるが、県と熊本市が昨年5月に九州で初めて先行配置し、1人が既に活動を始めている。働き盛りで発症し、勤務先の会社から退職を余儀なくされ、社会とのつながりを断たれて引きこもってしまうケースも多い若年性認知症。コーディネーターには、患者それぞれの症状や希望に沿った新たな「居場所」へのつなぎ役が期待されている。

62歳のときに若年性認知症と診断を受けた女性が、熊本市内の児童養護施設で週1回、ボランティアで子どもたちの保育の手伝いをしている。子どもたちと縄跳びを回したり、砂遊びをしたり…。「家にいても、一人でぼーっと一日を過ごすだけ。子どもたちは寄ってきてとてもかわいいんです」。女性に子どもたちはなつき、遊んでもらおうと列をつくることもある。

女性を保育ボランティアにつないだのは、県と市の委託を受けた若年性認知症支援コーディネーターの太田千里さんだった。

パート勤務だった女性は、発症をきっかけに同じ顧客に何度も電話をかけるなどのミスが続き、2年前に解雇された。女性の次女は「生活の中心だった仕事がなくなり、すべてのことに意欲を失っているようだった」と振り返る。

次女が「認知症ほっとコール」に相談。サポート役として引き受けた太田さんは「子どもと関わりたい」という女性の希望を聞き、児童養護施設のボランティアを見つけた。しかし、若年性認知症の人を受け入れた経験がない施設は当初、「子どもに危害を加えるのでは」と消極的だったという。

太田さんは女性の主治医や作業療法士から聞き取りをして、「絵本の読み聞かせなど、グループではなく1人で子どもたちと接する遊び方が望ましい」といった留意すべき点を施設に伝えた。その後、施設側はボランティアとしての受け入れを決めたという。

◇    ◇

社会福祉士などの資格を持つ太田さんは、本人の症状や趣味に合った居場所づくりを心掛けている。「働きたい」との要望があれば事業所を見つけて紹介したり、「パソコンを習いたい」という人には、地域活動支援センターのパソコン教室につないだり、発症後も働き続けている人のために、会社と交渉して配置転換を求めたこともある。

「どこにもつながっていない空白期間が長いほど症状は進んでいく。発症してもできることはたくさんある。本人の可能性を生かし、選択肢を一緒に見つけたい」と太田さん。県認知症対策・地域ケア推進課によると、県内の若年性認知症の患者数は少なくとも約900人。太田さんは「早期に診断されることは重要だが、早期絶望になってはいけない」と強調している。

認知症ほっとコールは県と市の委託を受けて「認知症の人と家族の会熊本県支部」が運営している。電話は096(355)1755(水曜休み)。

(国崎万智)

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若年性認知症と診断されても、できることはたくさんある。その人の希望や能力を見極めて、新たな居場所へとつなげてくれるコーディネーターの配置が広がってほしい。

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