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2016.03.24 update.
北佐久郡軽井沢町でオーダーメードの紳士服店を営む島邑(しまむら)和之さん(58)=小諸市=が、着なくなった制服を小さく仕立て直してテディベアに着せた「制服ベア」の制作に力を注いでいる。「思い出やドラマが詰まった制服を形に残したい」。口コミで注文は増え、昨年初めて年間の注文数が100体を超えた。手作りのため時間がかかるが「多くの人に届けたい」と励んでいる。
セーラー服にブレザー、ジャンパースカートに学生服―。旧軽井沢で営む「シマ・インターナショナル 軽井沢ベアーズ」には、これまで手掛けた数々の制服ベアの写真が壁一面に飾られている。
「ご家族やお子さんのさまざまな思いや人間ドラマが詰まっている」。写真を眺め、感慨深げにつぶやく。兄弟がお下がりで着回した園児服のテディベアは、「いつまでも兄弟仲良く」との母親の思いが込められているという。
これまで全国150校以上の小中高校などの制服をテディベアにしてきた。依頼者から制服を郵送で受け取ると、校章やボタン、ネクタイなどすべて再利用して本物そっくりに小さく再現する。全て手作りで、1体4日ほどかかる。高さ40センチ(1万9800円)、同30センチ(1万5800円)の2種類ある。
手作業による「軽井沢産」がこだわりだ。さらに、完成した商品は店頭でお客さんへの手渡しを原則とする。「制服は、いわば『分身』。簡単に箱詰めにして送れない」と言う。
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大阪府吹田市出身。地元の高校を卒業後、アパレル大手のオンワード樫山(東京)に就職した。小諸市のながの東急小諸店(2002年に閉店)内の紳士服オーダー売り場に出向していた経験などから、1996年に同市で独立。オーダースーツの店を開業し、02年4月には佐久市の佐久平駅前に移転した。
当初、スーツを作る顧客らへのサービスとして制服ベアを贈っていた。本業のスーツ作りではデザインや採寸が主な仕事で縫製の経験はあまりなかったが、試行錯誤しながら独学でミニチュアの制服やテディベア作りの技術を学んだ。
評判が口コミで広がり、十数年前から商品として扱うようになったが、年間の注文数は多くて30体余。制服ベアは副業だったが、転機は11年3月の東日本大震災だった。
震災から3カ月後、被災して高校生の娘を亡くした東北地方の母親から、娘の制服でテディベアを作ってほしいと手紙が届いた。娘が出るはずだった卒業式には制服ベアと共に出席したい―。そんな言葉に、涙が止まらなかった。
「制服ベア作りは、誰かのためになる仕事なんだ」。これからは人生を制服ベアに懸けようと決意した。
観光客が多く訪れる軽井沢で制服ベアを知ってもらうため、翌年4月、現在の場所に店舗を移転。だが、今の悩みは人手不足だ。パートの女性と島邑さんの2人で作っているため、引き渡しまで10カ月待ちで、注文を断ることも増えてきた。
需要に応えようと、生産体制を整えるため来年中には店を会社組織にすることを目指す。「制服ベア作りは自分にしかできない意義がある仕事。家族の絆をつなぐ制服ベアで多くの人を幸せにしたい」と意気込む。
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VOICE!happy news特派員・ぐれーぷふるーつ 22歳 大学生 長野県
思い出の詰まった制服は、もう二度と着ないことが分かっていても捨てることができない。しかし、制服をテディベアに着せることでそれを見るたびに当時を思い出すことができるだろう。 そのベアとともに卒業式を迎えることができる人がいることも素晴らしい。いつか自分の制服でも作ってもらいたい。