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2017.08.03 update.
記者が掘り下げる 増刊号 いきなり団子の意味は? 県民スイーツ 甘くない謎 「不意の来客に」「短時間で」…定説なく
記者さんはいきなり団子の「いきなり」の意味は知ってますか? 熊本弁の辞書には「すぐできる」とありますが、私の出身地の益城町では「いきなり」は「飾り気がない」「散らかっている」です。いきなり団子は「飾り気がない団子」がしっくりくるのでは。(熊本市、医師・男、74)=7月6日掲載
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いきなり団子の語源については、「ハイこちら編集局」に寄せられた素朴な疑問をきっかけに、紙面上で“熱い論争”に発展した。6年前、小中学生新聞「くまTOMO」で、子どもたちの疑問に答えるコーナー「プリンス探偵社」を担当していた記者の魂にも火がついた。これは参戦しなければ…。
いきなり団子は、サツマイモとあんを小麦粉の生地で包んだ郷土菓子。近年は人気アニメ「ケロロ軍曹」にも登場し、全国的にも有名になった。イモの品種や生地の配合によって、店ごとに個性的な味が楽しめるのも特徴だ。
まず考えたのは、以前このテーマを取材した“先輩”に教えを請うことだ。訪ねたのは熊本市中央区の出水南小4年岡本一花[いちか]さん。熊日新聞コンクールに応募した親子新聞で昨年夏、いきなり団子の語源を探っていた。
「いきなり団子が大好き」という岡本さんは、水前寺成趣園の近くにある一押しの「お菓子のふどきや」を取材し、店主から「急な(いきなりの)お客さんをもてなすために作った」という由来を聞き出していた。なるほど、説得力がある。
ただ、「こちら編集局」では、ほかにもさまざまな説が飛び交っている。
次に頼ったのが、県菓子工業組合(熊本市)。同組合は、地域ブランドを保護する特許庁の「地域団体商標」に「熊本いきなり団子」を出願し、今年6月に登録された。ここなら詳しいことが分かるかもしれない。
組合員で「商標」登録に尽力した「コウヤマ」(益城町)を訪ねた。同社はサツマイモの生産から、いきなり団子の製造・販売まで手がけ、同町で直営店「芋屋長兵衛」を経営している。
「『いきなり』の語源は諸説あって、定説はありませんよ。いまだに謎のままです」と堤洋介常務(55)。
えっ、“いきなり”の調査終了?
堤さんによると、県内でいきなり団子を販売する店では「短時間で作れる」や「簡単に作れる」、「不意の来客にも出せる」などの由来を客に紹介するところが多いという。
ほかにも、イモを生のまま入れて蒸すことから「生き成り」とする説や「いきなり食べるとイモがのどに詰まるから」という説まであるという。
「熊本県方言辞典」や郷土菓子に関する本の記述に今回の取材を加味して、主な説をまとめてみた。確かに、どの説も甲乙つけがたい気がする。
「いきなり団子の始まりは古くは江戸時代とされますが、その点も諸説あって定かではありません」と堤さん。県民に身近なおやつでありながら、謎が多い。それもいきなり団子の魅力の一つかもしれない。
【記者ひとこと(太路秀紀、政経部)】
●世界進出遠くない!?
ぼっ、僕としたことが…。意気込んで取材に臨んだ割には、謎を解き明かして論争に終止符を打つことができませんでした。しかし、取材を通じて店によって味に違いがあることは、はっきりと分かりました。イモの素朴な甘みが特徴のいきなり団子は、甘いものが苦手な人でもおいしく食べられます。コウヤマでは、イスラム圏向けにハラール認証も目指しているとか。世界の「イキナリダンゴ」になる日も、そう遠くないかもしれません。
この記事でHAPPYな気持ちになったら
VOICE!ゆであずき 21歳 大学生 熊本県
「いきなり団子」の名前の由来について、先日よりさまざまな意見が交わされています。
それだけ昔から熊本に根付き、熊本県民が愛着を持つ食べものにもかかわらず、由来が曖昧というのが何だか面白いところです。最近ではいきなり団子を洋菓子風にアレンジしたものや、素材にこだわったものが出てきて、観光にも一役買っているみたいです。
さて、この記事で注目したのはいきなり団子の“世界進出”です。熊本県民でありながら、いきなり団子がハラール認証を目指していることは初耳でした。いきなり団子がハラール認証となれば、市場拡大だけでなく、2020東京五輪の選手村や出店などにいきなり団子が並ぶなんてことも…!? 五輪に出場する選手だけではなく、選手のパフォーマンスや五輪自体を盛り上げる食べものにも今後は関心を持って応援したいですね。