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2017.09.22 update.

札幌芸術祭 集客苦戦

北海道新聞社 | 2017年9月10日掲載

<アングル>道外イベントと競合/会場は分散*札幌芸術祭 集客苦戦*PR手法工夫し巻き返しへ
札幌市内で開かれている道内最大規模の現代アートのイベント「札幌国際芸術祭」(SIAF(サイアフ))で、チケットの売れ行きや集客が伸び悩んでいる。観覧者からは多様な作品を楽しめると評価の声も多いが、道外の類似イベントとの競合や会場が多くに分かれる課題もあり、実行委は前半の集客の厳しさを認めた上で、PR強化などで巻き返しを狙う。実行委の中心、札幌市が目指す「芸術によるまちづくり」の浸透には時間がかかりそうだ。(報道センター 小林史明)
SIAFは8月6日に開幕し、10月1日まで。目玉は、前衛的な音楽や映像で人気の芸術家クリスチャン・マークレーさんの作品展(札幌芸術の森=南区)、SIAF芸術監督の音楽家大友良英さんらによる中古のレコードプレーヤーを使った空間展示(モエレ沼公園=東区)などだ。
実行委は有料会場に何度も来てもらおうと、入場無制限のパスポートを導入。8月末までの販売数は、前売りが1万534枚だったが開幕後は1344枚にとどまり、実行委事務局は「このままでは目標の2万4千枚に届くのは厳しい」と語る。入場者は1日平均6千人で、前回の6642人をやや下回る。
*薄い地域性 指摘も
全国の芸術祭を調査する東京工科大の暮沢剛巳教授(芸術論)は開幕後、2泊3日で各会場を巡った。暮沢教授は「『芸術祭ってなんだ?』と問い、『ガラクタの星座たち』というコンセプトで多様な作品を集める姿勢に一貫性がある」と評価しつつ、「札幌という地域性をあまり感じない」とも指摘した。
2000年以降、横浜市や愛知県などが相次ぎ芸術祭を開催。10年の瀬戸内国際芸術祭(香川県など)が93万人を集めたことなどで、芸術をまちづくりと結びつける動きが広がり、最近は全国40カ所以上で開かれている。今回、SIAFの開催期間は、ヨコハマトリエンナーレ(横浜市)、リボーンアートフェスティバル(宮城県石巻市)など少なくとも全国六つの日程と重なる。競合の中で、特徴を出すことが各開催地の課題だ。
こうした中で大友さんは、得意とする即興演奏をSIAFの運営手法に取り入れ、「市民や来場者を巻き込み、その場で芸術が生み出される他にはない特徴がある」と独自性を強調。「前半は成功したと思っている」と振り返る。
実行委は航空各社の機内誌や飲食店などの協力でPRしてきた。それでも道外向けパスポートの販売数は8月末までで1074枚、全体の1割ほど。芸術を地域の観光や産業と結びつけるSIAFの目標を達成するには壁がある。
交通アクセスやPR手法にも課題がある。9月上旬、廃材を使った光と音のインスタレーション(空間展示)が見られる金市舘ビル(中央区)を訪れた市内の男性(54)は「既成概念を覆す作品ばかりで面白い。でも、会場数や突発的なイベントが多く回りきれない」とこぼした。
今回のSIAFでは、会場にススキノや路面電車(市電)なども加え、前回の2倍以上の44カ所に。参加アーティストも国内外106組で、前回の64組から大幅増とした。半面、会期は57日間とし、前回から15日間短縮した。
主要会場のモエレ沼まではJR札幌駅から無料シャトルバスで35分、芸術の森までは40分。会場は広大で作品も多く、全会場を数日で回るのは難しい。鑑賞ガイド未掲載の突発的イベントは会員制交流サイト(SNS)などで周知するが、SNSを使わない人に伝わらない課題が残る。芸術監督の大友さんも、会場の分散について「分かりづらい部分はある」と認める。
*15日から大型催し
実行委は、音楽と美術作品を組み合わせた即興パフォーマンス「OPEN(オープン) GATE(ゲート)」(15~18日、石山緑地=南区)など、会期後半の大型イベントで巻き返しを図る。実行委の熊谷淳事務局長は「作品や企画の魅力が伝われば観覧者は増える。チラシの早め配布などで集客したい」と、PR手法も工夫する考えだ。

◇札幌国際芸術祭(SIAF)◇
現代アートなどの作家を一堂に集めて開催する3年に1度の「トリエンナーレ」形式を取る。2012年の基本構想では、文化芸術の振興や市民による芸術活動の活性化などを通して観光振興や新産業の創出が図れるとして、札幌市のまちづくりの目標である「創造都市さっぽろ」宣言の象徴的事業に位置づけた。

*札幌国際芸術祭(SIAF)2014年開催と17年開催の概要
開催年          2014              2017
テーマ          都市と自然             芸術祭ってなんだ?
芸術監督         坂本龍一              大友良英
会期           7月19日~9月28日(72日間) 8月6日~10月1日(57日間)
会場           18カ所              44カ所
アーティスト       64組               106組
入場者          47万8252人         ※15万6千人(目標35万人)
有料会場のチケット販売数 4万887枚           ※パスポート1万1878枚
                               (目標2万4千枚)
                              ※個別鑑賞券5942枚
                               (同2万1千枚)
経済波及効果       59億300万円          目標43億円
※は8月31日現在。「目標」は最終日までに目指す数値

【写真説明】約100台のレコードプレーヤーを配置して「音の風景」を生み出すモエレ沼公園の展示。市内各所に分散した会場に、いかに観覧者を引き込むかが課題だ

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VOICE!いとう 21歳 大学生 北海道

パッと目についたこの記事、私は高校生の時に美術部だったので気になりました。「行ってみたい」とは思うが、記事にも書いてある通り「札幌という地域性をあまり感じない」と私も思う。だからこの記事を見るまでは芸術祭が開催されていることも知らなかった。 「行きたい」と強く思うためには、「なにか特徴を作らなければいけないんだな」と感じた。

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