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2018.01.12 update.
汎発性円形脱毛症 元プロ野球選手 森本稀哲 発症原因は解明されていない
元プロ野球選手の森本稀哲(ひちょり)さん(36)が初の著書『気にしない。どんな逆境にも負けない心を強くする習慣』(1400円、ダイヤモンド社)を出版した。小学生のときに髪の毛が抜け落ち、人目を気にする少年時代を送ったことで、逆境に負けない強い心を持つことができたという。難治性の病気を抱えながら前向きに生き抜く心とは―。 (村島有紀)
小学1年生の頃、突然髪の毛が抜け始めた。「洗面台の鏡に向かって、髪の毛を触ると必ず抜ける。どこまで抜けるのか、治るのだろうかと不安で怖かった」と振り返る。
頭部だけでなく、まゆやひげなど体の2カ所以上の体毛が抜け落ちる「汎発(はんぱつ)性円形脱毛症」。母親に連れられ病院に通い始めた。
病気を隠そうとした
しかし、はっきりとした原因は分からず、治療法は確立されていない。都内の診療所や大学病院など複数で治療を試みたが、変化はなく、「すっかり医療不信に陥った」。
見た目が変わったことで精神的にも大きなストレスを受けた。小学校では桁違いのハゲという意味で「1000万ハゲ」とあだ名をつけられる。テコンドーの練習中にも帽子をかぶって病気を隠そうとした。野球を始めたのは「常に帽子をかぶっていられるから」という後ろ向きな理由だったという。「当時はすごく気にする子だった。子供は残酷ですから」と森本さん。
一方、中学、高校で野球に打ち込み、プレーで認められるようになったことで、自信もついた。病院に通うこともやめ、野球漬けの日々…。野球の名門、帝京高校(東京都板橋区)に入学後は主将として部員をひっぱり、平成10年度のドラフト会議で日本ハムファイターズ(現北海道日本ハムファイターズ)から4位指名を受けて入団。目立ちたがり屋の本来の性格を取り戻し、派手なパフォーマンスなどでチームのムードメーカーとなった。
見た目よりも中身
「健康に育っていたら分からなかった人の気持ちも分かるようになった。友達は中身を見て付き合ってくれる。大事なのは見た目よりも中身。自分の心を強くしたのは病気でもある」
27年に引退し、野球解説者を務めながら講演活動も行う。もし、今、見た目を気にする人がいたら―? 「一番かっこいいのは、『強い心』。見た目なんか、気にしなくていい。それが、一番言いたいこと」と笑顔で語った。
発症原因は解明されていない
日本皮膚科学会認定専門医の竹中洋史医師(メンズヘルスクリニック東京)=写真=によると、円形脱毛症は軽い順に、①10円玉ぐらいの孤立性の脱毛部分が1、2個出現する単発性円形脱毛症(通常型)②①より多くの場所に出現する多発性円形脱毛症③全頭髪が抜け落ちる全頭脱毛症④汎発性脱毛症⑤後頭部から耳の後ろの生え際に境界鮮明な帯状の脱毛部分で発症する蛇行状脱毛症―の5型に分類される。
①の場合は自然に治ることが多いが、③④⑤など、抜け落ちる範囲が広いほど直りにくく、再発することが多い。最も有効と考えられる治療法が、局所免疫療法だ。薬剤で頭皮などに軽い接触皮膚炎(かぶれ)を起こすことで、発毛を促す。汎発性円形脱毛症の場合は約半数に効果が見られるというデータもある。
原因について以前は「ストレス」という言説もあったが、科学的な解明はされていない。現在は、免疫抑制剤のステロイドが発毛に有効なことから、自己免疫異常説が有力とされる。
米国では、円形脱毛症は人口の0.1~0.2%が発症しているというデータがあり、国内も同様とされる。男女間に差はなく、竹中医師は「原因が分からず、ある日突然誰にでも起こる病気。数週間という短期間で髪が抜け落ちるため精神的なケアも必要」と指摘する。
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元プロ野球選手の森本稀哲さんが汎発性円形脱毛症だったと初めて知った。
私の曽祖父も同じ病気だったのかも知れない。小学校から親代わりとして参観にも来てくれていたが、つるつる頭を皆がからかうので恥ずかしく、中学生の時、とうとう「来ないでほしい」と言ってしまった。それから曽祖父は来なくなった。
でも今、30歳も年下の森本さんに教えられた。彼は健康だったらわからなかった人の気持ちもわかるようなり、大事なのは見た目よりも中身だと気付いたという。
今思うと、来なくていいと言った私より、曽祖父自身はどれだけつらく寂しかっただろう。
「来なくていい」ではなく「気にしなくていい」と、どうして言えなかったのかと思う。
そして今、私の妻は抗がん剤の副作用で脱毛が激しい。今こそ言ってやれる。
気にしなくていい、見た目は関係ない。
それだけ強く体の中で病気と闘っている証拠なんだからと。