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2018.03.28 update.
人が少ないなら、人けを増やそう―。住民そっくりのかかしを手作りし、人口の減った集落をにぎやかにしようと取り組む地区がある。西条市南部の山あいにある大保木(おおふき)だ。山の暮らしで培った技術や知識を生かしながら、過疎高齢の現実と向き合う住民たちの姿がある。
住民らは22日、雨対策を施したかかしを屋外に飾った。石鎚山の登山客の目に留まる県道沿いの施設に、遍路姿の「女性」らが仲良く並んだ。自分がモデルのかかしと対面したNPO法人西条自然学校のスタッフ今川義康さん(42)は「大保木で働き始めた9年前の姿に似ている。地域の一員と思ってもらえてうれしい」と喜んだ。
きっかけは3年前。「かかしの里」として知られる徳島県三好市東祖谷を、公民館の研修旅行で訪れたときだった。大保木地区の人口は約180人。東祖谷も同じく山間地にあり、過疎という悩みも同じ。違っていたのは200体ほどのかかしがまちのいたるところに飾られていたこと。
「これなら自分たちにもできる」と大保木の人たちは沸いた。制作リーダーの十亀貴代子さん(74)=同市小松町妙口=は「なんだかにぎやかで、人のいるような温かさがあった」と振り返る。
東祖谷でかかし作りを始めた綾野月美さん(68)を2017年6月、大保木に招き、温かみのある表情や動きのある体作りを教わった。住民らは月1回のペースで制作活動を続け、2月末までに31体を作り上げた。
モデルになる人が、かかしに着せたい服を持参し、ポーズをリクエストすることも。「本物よりも男前」「若返ったんやない」と大笑いしながら、3、4人で1体を仕上げていく。出来上がったかかしには名前を付け、住民基本台帳ならぬ「かかし住民台帳」に記録する。
大保木では公民館を拠点としたサークル活動や行事が盛んだ。顔を合わせた定期的な交流が、1人暮らしのお年寄りの見守りにもつながる。公民館の岩間好美主事は「地区出身者に輪が広がり、協力隊をつくる動きも出ている」と話す。
地区の高齢化率は50%を超えた。人々は力仕事や料理、裁縫など、個々人が得意な分野でリーダーシップを発揮し、自分たちで楽しみをつくり出す工夫を絶やさない。
かかし活動の先に描くのは、移住者の呼び込み。住民らに共通するのは「人を呼ぶなら、まず自分たちが楽しいと思える場所でなければ」という考えだ。過疎のまちが活性化の新たなかたちを提示しようとしている。(中井美歩)
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VOICE!上源太佑 21歳 大学生 愛媛県
過疎の集落をにぎやかにするため、住民が掲げた「人を呼ぶなら、まず自分たちが楽しいと思える場所でなければ」という考え方は素晴らしいと思います。NPO法人の方が地域住人のひとりとして、自分がモデルのかかしをつくってもらい、喜んでいるという一文も心に残りました。