OUENDAN新聞応援団
2011.10.29 update.
大学生スタッフが高校生から悩みを聞き、進路の相談に乗る・・・・。そんなキャリア学習プログラムを運営する、NPO法人「カタリバ」代表理事の 今村さん。「社会起業家」として注目され、忙しく全国を飛び回る毎日だが、東京の事務所に戻ると、切り抜いておいた新聞記事を事務所内の掲示板に貼るのだ という。
教育関係の企画、NPO法改正についての解説、若者の雇用問題についてのニュースなど、切り抜く記事は様々。「同じ分野で活動をする他 団体の記事や、教育の先進事例の記事などを読むことで、自分たちの活動を客観的に見ることにもつながる。学生のスタッフにも読んでほしくて」と狙いを語 る。「インターネットメディアの記事は1回クリックして読めば終わり。切り抜きは大勢の目に何度も触れ、みんなの学びになるのが魅力です」
子どもの頃から新聞は身近な存在だった。岐阜県高山市の実家は商売を営んでいることもあり、地元紙や経済紙など複数の新聞を購読していたためだ。
だが、本格的に読むようになったのは大学受験を控えた高校生の頃。小論文と面接が中心の推薦入試のために、小論文対策として新聞を活用した。文章を読むの は苦手だったが、何度も目を通すうちに難しい言葉も理解できるようになった。作文の練習のつもりで新聞社に送った投書に、読者から感想が届くといううれし い体験もした。「面接で時事問題について尋ねられ、スラスラ答えられたのも新聞のおかげ」と笑う。
東日本大震災後、被災地の子どもたちに学習の場を作ろうと、宮城県女川町の小学校校舎を借り夜間学校を始めた。教師には被災した塾講師らをあて、雇用の場を生み出すのも狙いだ。
取り組みを始める際には、情報がきめ細かく載る新聞が役立った。「被災者の置かれた状況や、彼らの思い。本当に必要とされている支援は何かを考える上で、それらの記事が参考になった」と振り返る。
インターネットに親しんできた世代としては「新聞社はツイッターなどと連携して世論調査をしてはどうか」とも思う。「新聞で酷評された政策が、ツイッターでは好評を得ていることもある。新聞は若者の感覚を取り込めていない部分もあるのでは」と苦言も呈する。
とはいえ、新聞は高校生ら若者に触れてもらいたいメディアだと考えている。カタリバの活動で接する高校生の中には、「やりたいことが分からない」と口にす る生徒も多いが、そんな子には「それなら新聞を読んで」と勧めたいという。「新聞には、世の中で必要とされていることや、今やるべきことについて、ヒント が詰まっている。読むうちに答えが見つかることもあるはずです」
PROFILE今村久美
NPOカタリバ代表理事。大学在学中の01年に前身の団体を立ち上げ、現在4500人のボランティアと活動している。内閣府「平成21年度女性のチャレンジ賞」を団体受賞するなど、社会起業家を代表する一人。