OUENDAN新聞応援団
2009.04.05 update.
意外に思われるかもしれませんが、僕は新聞を読むことが当たり前と考えている大の「新聞応援団」です。新聞スクラップは20歳くらいから続けていて、社には95年からのスクラップをファイルした資料を置いています。新聞との出会いは、父から「新聞にすべての情報があるから読みなさい」と勧められたことでした。そして「世の中の情報を吸収しなければ」と数紙を読み始めたのです。
新聞には何千、何万人もの新聞記者が世界中を走り回り、足で得た情報が満載されています。事実を端的・正確に知るのには最適なのです。前より時間が減りましたが、今は4、5紙を30分くらいで読んでいます。朝に読み切れない時は週末に、最後の日付から1、2週間分まとめて読むこともあります。
新聞はまさに「社会を学べる教科書」です。
新聞を読む時は、目からある程度離して読みます。こうする方が見出しを読むのが早く、全体が頭に入りやすい。満員電車に乗る時のように縦に長く折って読むと、後で「こんな記事が載っていたのか」と大事な記事を見逃している場合があるので、広げて読むのが大事なのです。
具体的には、まず赤ペンを手にし、①「これ」と思った記事を囲む②余白に日付を入れて記事を切る③記事をスクラップ用に張る、という順です。3回記事に接触すると、記事の内容が無意識に頭に入ってきて自然に覚えるんです。目的意識を持って読むと、自分に必要な質の良い情報がつかめます。
さらに読み込めば、ペンが勝手に動いて自分の興味も教えてくれます。「実は自分にこんな興味があったんだ」と気づかされることもあります。切り取った記事がアイデアに結びつくと思えば切り取った記事を並べ替えたり、組み合わせたりします。それがふとしたきっかけでビジネスに結びつくんです。
新聞は毎日読むと早く読めるようになります。体に記事が入ってきます。今の僕があるのは一定期間、体にしみこむくらいに新聞を読み続けたからで、今も知識や判断のベースになっています。専門家の言うこともよく分かります。新聞はまさに「社会を学べる教科書」です。
08年もいろんな記事を読みましたが、最も印象に残ったのが「リーマンショック」でした。僕自身が数年前、ニューヨークのリーマンのオフィスを訪れており、まさにあの現場がニュースになったのです。若い時は報じられるニュースを「遠い世界の話だ」という感じで読んでいましたが、年を追うごとに自分に関係したことが多く載るようになり、さらには自分自身がニュースになってしまうこともあります。ニュースや社会が身近になり、ますます目が離せません。
新聞を読まないと不安で仕方がないんです。
私はネット業界の人間ですが、紙の新聞はあった方がいいと思います。ネットや携帯サイトの記事は大きさが一律で、記事や広告の大きさだけでは重要度が感覚的に分かりにくいという欠点があります。現実的には、紙とネットの両方を提供する方がいい気がします。
僕は、新聞はもっといい方向に変われると思っているんです。特に言いたいのは「新聞社は情報提供のしっぱなしではいけない」ということ。新聞社は読者と密接につながっており、新聞社の工夫次第では新たなビジネスの機会を生む可能性がたくさんあります。
例えば今まで長年僕がしてきたようなスクラップの作業を、ネットで個人向けサービスとして始めればさらに便利になります。読者が読んだ記事をデータで蓄積すれば、新聞社は読者が何に関心を持ち、何を読んでいるのかも把握できるようになります。
仮に車の記事に関心の高い読者がいたら、車関連でスクラップしたいデータが蓄積されます。新聞社はそのデータから読者の興味の傾向を把握し、新聞社の方から先に車の記事を提供することもできるかもしれません。そうすれば読者は検索に時間をかけることがありませんから利便性が上がりますよね。またもしも利用者が「後々必要だ」と考えるネット上の記事を蓄積できるデータベースがあれば、キーワードで引き出すことも可能になり、こちらもかなり過去の情報が使いやすくなります。
僕は新聞を読まないと不安で仕方がないんです。「自分たちが開発しているサービスと同じことが他社から発表されているのでは」とか「業界に打撃のあるようなことが起こっていないだろうか」とか。だから怖くなることがあるほどです。そのくらい新聞は僕にとって重要なものです。
新聞は社会の教科書です。新聞社なり記者が個性を生かして世の中の出来事を解説し、それで自分の理解もより深まる。とても大事なことだと思います。ぜひさらにネットと融合していい記事を作ってほしいし、若い人にはぜひ新聞を読む習慣をつけてほしい。経済や社会の動きを勉強するのはビジネスマンにとって基本中の基本です。自分でお金を払って購読してこそきちんと頭に入るし、その価値も分かるようになります。
PROFILE熊谷 正寿
東証一部上場のgmoインターネットを中心とするグループ55社、約1,800名のスタッフを率いる。「すべての人にインターネット」を合言葉にwebインフラ・ec支援事業、インターネットメディア事業を展開。2005年には米国ニューズウィーク社「super ceos(世界の革新的な経営者10人)」に選ばれる。著書には「一冊の手帳で夢は必ずかなう(かんき出版)」などがある。