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OUENDAN新聞応援団

2015.04.10 update.

多様な出合いの場を生み出す「メディア遊び」!まわしよみ新聞のススメ(後編)

陸奥 賢 | 観光家/コモンズ・デザイナー/社会実験者

~オプンソスで「いつでも、どこでも、だれでもできる」が合言!大阪生まれの陸奥賢さんが街角の景からヒントを得て生み出した「まわしよみ新」。多な出合いのを生み出す「メディアび」の手法を聞いた。

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―これまでどのくらいの数の「まわしよみ新聞」を実施しているのですか?

「まわしよみ新聞実行委員会」というものがありますが、会長兼委員は僕だけでして(笑)。初年度に「100日連続まわしよみ新聞」「100個所まわしよみ新聞」というのをやったりしましたし、まわしよみ新聞がはじまって2年半ほどになりますから、僕が主催したのは400回近くになると思います。

 

ただ、まわしよみ新聞は「いつでも、どこでも、だれでもできるコモンズ・デザイン」を掲げているオープンソースのメディア遊びなんです。誰でも自由にまわしよみ新聞で遊んでいい。だから日本全国にたくさんの企画者、編集者、協力者がいていろんなところで実施しています。新聞さえあればできますから、開催場所もカフェやレストラン、商店街、コミュニティ・スペース、公民館、図書館、会社、小中高大といった教育機関、老人ホームなど多岐にわたっています。おそらくすでに3万人近い方が参加していると思います。東北の高校は280人、福岡の中学は300人と、大規模なまわしよみ新聞が開催されたりもしていて。ぼくも実数を把握できてないんです。この取り組みは参加者によってどんどんと変容する「集合知のデザイン」なので、どんなふうに展開していくのか、ぼくにも全くわかりません。みんなで育てていくメディア遊びで、一種の「社会実験」やともいっています。

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-アナログ×デジタル!ハイブリットな「まわしよみ新聞」は、壮大な「メディア遊び」。

新聞ってのは結局、紙なんですよね。この紙というのは究極のアナログ・メディアやと思うんです。老若男女だれでも手にすることができる。なにより、切ったり貼ったりこれだけ「工作に向いたメディア」は今の世の中、なかなか見当たりません。こういう「工作」や「手作り」できるメディアは、インターネットとは全く違います。まわしよみ新聞はある意味「新聞作り体験」でもあるんです。これは紙である新聞やからでこそできる面白味です。

 

まわしよみ新聞の発想や展開は「WEB 2.0」といったネット・メディア、デジタル・メディアの影響なんかも非常に大きいんです。とくに著作権をいろいろと開放して再利用を許可するクリエイティブ・コモンズの考え方には深く共感してます。そもそもフリーソフトとかウィキペディアとか、そういったオープンソースの思想はウェブの世界ではすごい勢いで浸透している。「ニコニコ動画」のように、いろんなコンテンツ、キャラクター、物語を可変し二次創作、三次創作、四次創作していって遊び倒すという文化は、ほんまに豊かやなぁと思ってます。

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ところが、リアルな世界では、意外とオープンソースの思想によるプロジェクトや企画がないんですわ。だから、ぼくはそれをまわしよみ新聞でやってみたというわけです。誰でも参加できる新聞というアナログ・メディアに、デジタル・メディアのオープンフリーの概念を導入してみた。そうすると80歳のおばあちゃんと小学生が一緒になって新聞を作って遊ぶというユニークな場が生まれてきたわけです。ネットは高齢者には縁遠いし、小学生には早すぎるといった場でもありますが、新聞ならそういった垣根を軽々と越えられる。新聞によって、人と人が結びつく。ネットを超えた場作りが新聞なら可能になる。

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キーワードは「遊び心」やと思ってます。みんなで新聞を遊ぶと。いままで新聞は「情報を伝える学びのメディア」という位置づけやったと思います。それはそうなんですが、実は「みんなを結びつける遊びのメディア」にもなるぞ、ということなんですな。そうとらえ直すと、新聞はほんまに面白いです。これだけ多様性にあふれて、可変性に優れたメディアはありませんから。もっといろいろと遊べるはずで、いま僕自身がこの「メディア遊び」がおもろうて、夢中ではまってます。まだまだ、まわしよみ新聞、やりまっせ(笑)。

まわしよみ新聞:http://www.mawashiyomishinbun.info/

(追記)3枚目の写真の「たぬきよみ新聞」は、淡路島アートセンターとも連携事業で、狸耳をつけて「狸視点で人間社会を考える」という遊びです!

PROFILE陸奥 賢

フリーター、放送作家&リサーチャー、ライター&エディター、生活総合情報サイトall about(オールアバウト)の大阪ガイドなどを経験。2007年に大阪・堺の観光プロジェクトで地域活性化ビジネスプラン「sakai賞」を受賞(主催・堺商工会議所)。08年に大阪コミュニティ・ツーリズム推進連絡協議会「大阪あそ歩」のプロデューサーに就任。12年にはコミュニティ・ツーリズム事業として初めて「観光庁長官表彰」を受賞。現在は観光、メディア、まちづくりに関するプロデューサーとして活動中。「いつでも、どこでも、だれでもできるコモンズ・デザイン」を掲げる新しいメディア遊び「まわしよみ新聞」の発案者でもある。